社会人向けのイベントサークルを運営して、ここ3〜4年でじわじわ感じていることがある。
男性参加者の「熱量の変化」だ。
昔は会場に入ってきた瞬間、目線がぐるっと女性を探すような、あの独特のそわそわ感があった。今は正直、それがない男性が増えた。スマホをいじってる、飲み物を持ったまま壁際に立ってる、会話はするけど連絡先を聞く気配がない。
女の子たちの方が戸惑ってるんだよねぇ。「なんか最近の男の人って、こっちに興味なさそうで…」って帰りがけにぽそっと言われたこと、一度や二度じゃなかった。これって一体、何が起きてるんだろう。
女に興味ない男が増えたのは、データでも出ている
肌感だけじゃなくて、数字にも出てる話だ。国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査によると、18〜34歳の未婚男性のうち「異性との交際経験なし」の割合は、2021年時点で約4割に迫っている。10年前と比べると明らかに上昇傾向で、これは「草食系ブーム」みたいな一時的なカルチャーじゃない。
ただ、数字が出ているからといって、「恋愛したくない男が増えた」と言い切るのは少し違う。イベント現場で見てきた肌感として言うと、もっと複雑で、もっと個別の話だったりする。
理由1 コスパとリスクの計算が先に立つ
30歳の参加者・Kさんの話が印象に残っている。
彼は別に女性が嫌いなわけじゃない。話しかけられれば普通に会話するし、笑顔もある。なのにイベント終了後、「今日誰かと連絡先交換した?」と聞いたら、「しなかったです」とあっさり。
なんで?って聞いたら、「付き合っても続かなかったときのダメージがしんどくて…」って言葉が返ってきた。
恋愛ってコストがかかる。時間、お金、感情エネルギー。それが報われなかったときのダメージを、無意識に先読みして動けなくなってる男性が増えてる。経済学的に言えばリスク回避型の行動だけど、もっとシンプルに言えば「傷つくのがこわい」ってことだ。
理由2 承認欲求がもう、別のもので満たされてる
ゲーム、推し活、SNSのフォロワー数、Youtubeの視聴数。
恋愛って本来、誰かに必要とされる、認められるという体験が核にある。でも今は、その体験をもっとコントロールしやすい形で得られるルートがたくさんある。
イベントで「最近ハマってることある?」と聞くと、男性参加者の答えがここ数年で変わった。昔は「仕事、趣味、バイク…」みたいな話が多かったのに、今は「配信見てる」「推しのライブ遠征してる」「ゲームのランク上げてる」みたいな答えが増えた。
別に悪いことじゃない。ただ、そこに熱量が向いてるとき、恋愛って「わざわざ追いかけなくていいもの」になりやすい。心のエネルギーが既に使われてるから。
理由3 過去の恋愛で、何かが折れた
これは現場で一番よく見るパターンかもしれない。
34歳のTさんは、5年付き合った彼女と別れてから2年、誰とも会っていないと言っていた。理由を聞くと「なんか、もういいかなって」という言葉。目が笑ってなかった。
恋愛の傷は目に見えない。骨折みたいに「折れました」って表示が出るわけじゃないから、本人も周りも気づきにくい。でも確実に、何かの閾値が変わってる。次に踏み出すためのエネルギーが、まだ回復してない状態の人が、実はかなりいる。
理由4 親や社会からの「結婚しろ」圧力が薄くなった
昭和〜平成初期の男性は、ある意味「外から恋愛させられてた」部分がある。親に急かされ、職場で同期が次々結婚し、焦りが自然に恋愛を駆動させてた。
今は違う。親世代自身が「無理に結婚しなくていい」と言うケースも増えたし、晩婚化・未婚化が当たり前になって、焦る空気が薄くなった。
プレッシャーがなくなったのは自由なんだけど、一方でそのプレッシャーが「恋愛へのモチベーション」を補っていた側面も確かにあった。
理由5 経済的不安が、恋愛より先にのしかかる
デート代、プレゼント、将来の生活費。
「恋愛したい気持ちはある。でも今の給料で彼女を養えるか自信がない」。これ、複数の男性参加者から聞いた話だ。
正規雇用でも実質賃金が上がらない中で、恋愛を「経済的な問題」として先に処理しようとしてしまう。気持ちより先に計算が動くから、スタート地点にさえたどり着けない状態になってる。
理由6 ポルノ・バーチャル恋愛で「疑似体験」が完結する
これは少しデリケートな話だけど、現実として触れておく。
性的欲求や親密感への欲求が、リアルな関係なしに処理できる環境が今はある。ポルノへのアクセスは格段に容易になったし、美少女ゲーム、恋愛シミュレーション、VTuberへの投資といった文化が成熟してる。
脳科学的な研究では、ポルノへの過剰暴露が現実の異性への反応性を下げる可能性が指摘されている。欲求が別のルートで満たされると、リアルへの駆動力が起動しにくくなる。
理由7 アセクシュアルという選択肢が可視化された
ここ数年、アセクシュアル(他者に性的魅力を感じない、あるいは感じにくい)という言葉の認知度が上がった。
以前なら「なんか変わってる人」で片付けられていた人たちが、「これは自分のセクシュアリティだ」と認識できるようになってきた。それ自体は社会の成熟だと思う。
ただ、「女に興味ない男が増えた」の一部は、単純にアセクシュアルの人が可視化されてきた、という話でもある。増えたんじゃなくて、見えるようになった、という側面もあるかもしれない。
当事者の男性たちが、本当に感じてること
イベントで仲良くなった男性参加者と、帰りの電車でたまたま同じ方向になって、少し本音の話になることがある。そういうとき、けっこうな確率で出てくる言葉がある。
「恋愛したくないんじゃなくて、うまくできる気がしないんですよね」
女性側から見ると「この人、私に興味ないのかな」と映るやつの正体が、実は「自分に自信がない」「どうせうまくいかない」という、自己評価の低さだったりする。
心理学的には自己効力感の低下と呼ぶ。「自分がやれば成功する」という感覚が育ちにくい環境で生きてきた男性が、恋愛という最も失敗が見えやすい領域で、動けなくなってる。
「女に興味ない男」と接するとき、何が変わるか
女性の立場から見たとき、「なんで反応してくれないんだろう」と自分のせいにするのは、ちょっと待ってほしい。
上に挙げた理由のほとんどは、相手の女性には関係がない。傷、経済不安、自己評価、承認欲求の行き先。どれもあなたの魅力とは無関係で起きてることだ。
イベントで見てきた中で、恋愛に消極的な男性とその後うまくいった女性に共通してたのは、焦らなかったこと。最初に「この人を落とそう」じゃなくて、「この人が話しやすい空気を作ろう」という動き方をしてた。
そのあとTさんが別のイベントで再会した女性と、半年後に付き合い始めたと連絡をくれた。彼女は「最初からずっと、ただ普通に話しかけてくれた」と言っていたらしい。
壁際に立ちながら、心の中では誰かに話しかけたかった男性を、何人も見てきた側から言うと、そのもやもやした気持ちは、たぶん本物だから。

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