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初デートの場所が決まらない人へ|沈黙にならない決め方と会話術

待ち合わせの三日前。おしゃれなカフェがいいのか、無難に映画にしておくのか。決めきれないまま、また夜がふけていく。社会人イベサーでいろんな人が出会いを探して集まって、初対面どうしが向き合うあの空気を、すぐ横で何百回も見てきた。そこで気づいたことがある。場所選びでつまずく人の本当の悩みは、場所そのものじゃないんだよね。

正体は、沈黙が怖いこと。これに尽きる。

なんで場所がこんなに決まらないんだろう。理由はシンプル。たった一回のデートに、ぜんぶを背負わせちゃうからだよ。ここでコケたら次はない。センスがないと思われる。気まずくなったらどうしよう。頭の中がぐるぐる回って、調べるほど候補が増えて、増えるほど身動きが取れなくなる。服を買いに行って、ラックの枚数が多すぎて、結局なにも買わずに帰った経験、ない?あれと一緒。人は選択肢が増えすぎると、かえって選べなくなる。恋愛に限った話じゃなくて、誰の脳みそでも起きること。

だからまず、力を抜くところから始めたい。

最初にやってほしいのは、相手のかけらを集めること。コーヒー派か、お酒はいけるのか、休みの日は外に出たいのか、家でだらだらしたい派か。これ、当日までの何気ないやりとりに、わりと顔を出すもの。全部を知る必要なんてない。ヒントが二つ三つあれば、候補は勝手に絞れてくるから。

じゃあ、かけらって、どこに落ちてるのか。身がまえて質問する必要はないよ。やりとりの中で、相手がぽろっとこぼす言葉を覚えておくだけ。最近ハマってるものの話、苦手な食べ物の話、週末の予定のグチ。そこに好みのヒントが、ぜんぶ転がってる。それを当日さらっと反映する。たったそれだけで、私のこと見ててくれたんだ、が伝わるんだ。場所選びは、リサーチというより、相手への目配りなんだよね。

うちのイベントで知り合って、そのまま付き合った男性が、苦い思い出を打ち明けてくれた。相手の好みを何ひとつ聞かないまま、口コミの評価だけで高級なイタリアンを予約したらしい。皿が運ばれてくるたびに会話が止まって、シーンとした時間がじわじわ流れて…(泣)。料理は文句なしだったのに、味の記憶がほとんど残ってないって苦笑いしてたなぁ。豪華さは、緊張をほどいてくれない。むしろ背筋が伸びちゃう。

お金をかけるほど好かれる、と思い込んでる人もいるけど、そこは比例しないんだ。高すぎる店は、相手に気をつかわせるだけ。次は私が払わなきゃ、と気が重くなったり、背伸びした空間で言葉が縮こまったり。初回は、財布の中身より心の距離。気どらない場所のほうが、素のままで笑えることが多いよ。

ふたつ目。場所に求める役割を、見栄えのよさから会話のしやすさへ切り替える。これだけで景色がまるっと変わる。人は目の前に共通のなにかがあると、急に喋れるようになる生き物だから。この話は後でたっぷりするね。

三つ目が、地味だけどよく効く。短く区切れる場所を選ぶこと。初対面でいきなり三時間コースは、お互いしんどい。一時間ちょっとのお茶にして、楽しかったら散歩を足せばいい。微妙な空気なら、さらっと解散できる。逃げ道があるってだけで、ふっと肩の力が抜けるんだよね。余白を残すのが、初回のコツ。

四つ目はアクセス。乗り換え三回、駅から徒歩十五分、みたいな場所はすすめない。たどり着く前に、ふたりとも消耗してる。道に迷って空気が険悪、なんてことになったら目も当てられないでしょ。お互い行きやすい中間あたりで、駅から近くて、目印がはっきりしてる所。ここをサボると、当日になってじわっと響いてくる。

五つ目、プランB。雨が降ったら。予約してた店が満席だったら。次の一手をひとつだけ、ポケットに忍ばせておく。ぜんぶきっちり組む必要はない。引き出しに予備が一枚あるだけで、当日のハプニングに笑って動ける。あたふたしないだけで、印象がまるで違うんだ。

ここで必ず聞かれることがある。相手に、どこ行きたい?ってストレートに聞くのはアリなのか。答えは、聞き方しだい。まる投げはダメ。なんでもいいよ、を引き出して、二人そろって黙り込むパターンに沈む。そうじゃなくて、二択を渡すの。落ち着いて話せるカフェと、ちょっと歩く水族館、どっちの気分?みたいにね。相手は選ぶだけでいいし、その答えで好みもわかる。決断の重さを分け合いながら、情報も手に入る。一回で二度おいしい。

場所が固まったら、もうひと息。前日に、軽くひとことだけ送っておくといい。明日たのしみ、くらいの温度で足りる。長い文章はいらない。当日は五分早く着いておくと、自分の呼吸が整うよ。ぜえぜえ言いながら駆け込むより、ずっと落ち着いて見えるでしょ。それと、組んだプランに執着しすぎないこと。店が混んでたら、近くの別の場所へさっと移る。そこで動じない人が、いちばん頼もしく映るんだ。きっちりした進行より、しなやかさ。これは現場でずっと感じてる。

時間帯も、見落としがちなポイント。初対面なら、夜より昼や夕方がいい。明るいうちは、お互い変に気負わないし、ごはんでもお茶でも切り上げやすいから。暗くなってからのデートは、それだけで空気が重くなりがち。まだ慣れてないうちは、陽のあるカフェや街歩きくらいが、肩ひじ張らずにすむ。盛り上がれば、また次がある。一回目は軽さが正義、くらいでいい。

それと、終わり方。難しく考えなくて大丈夫だよ。楽しかったら、楽しかったってちゃんと言葉にする。それだけでいい。名残を惜しむくらいで店を出たほうが、次も会いたいって余韻が残るんだよね。お腹いっぱいになって、もう話すことないや、まで行くより、ちょっと足りないくらいでバイバイするのがちょうどいい。また会えるなら、最初からぜんぶ使い切らないこと。

ここから沈黙の話をしよう。

初対面で会話がぷつっと途切れる瞬間、あの数秒が、やたら長く感じる。早く何か言わなきゃと焦って、頭が真っ白。でもね、黙っちゃうのは、あなたのトーク力のせいじゃない。相手のことをまだ知らないんだから、話が続かなくて当たり前。会場で隣どうしになった初対面なんて、最初はみんなぎこちないもん。そこで生きてくるのが、さっき後回しにした場所選びなんだよね。

会話が不安なあまり、質問リストを頭に詰め込んでくる人、少なくない。気持ちはわかるよ。でも、これがクセモノでね。うちのサークルにいた男性が、まさにそれをやった。出身は?休みは何してる?好きな食べ物は?…用意した質問を順に消化していったら、あとで面接みたいだったって言われたらしい(笑)。質問と返答のラリーは、会話じゃない。取り調べっぽくなるだけなんだ。話題は、自分の頭から絞り出すより、その場から拾うほうがずっとなめらか。だからこそ、話題が散らばってる場所を選ぶ意味が出てくるわけ。

会話がラクな場所には、はっきりした共通点がある。目の前に、ふたりで眺められるなにかがあること。黙っても、目を逃がす先がある。だから間が、気まずくならない。

同じ二人でも、置かれ方ひとつで空気がまるで変わるんだ。静かな店で真正面から向き合うと、視線のやり場に困って、言葉を探すプレッシャーばかりがふくらむ。ところが横に並んで歩き出すと、急に口数が増えたりする。視線を外せる安心感、これが大きいんだよね。顔をじっと見続けなくていい。間が来ても、ふたりとも前を向いてるから、気まずさが薄まる。散歩が初デートでばかにできないのは、たぶんこの仕組みのおかげ。

うちのサークルにずっと通ってくれてた女性が、水族館デートの話をしてくれてね。正直、その時点では相手のことそんなに気になってなかったらしいの(笑)。なのに暗い館内をぷかぷか漂うクラゲを眺めてたら、自然と言葉がこぼれた。あれ可愛い、とか、なんか癒されるね、とか。沈黙が来ても、魚たちが勝手に話題を運んでくる。気づいたら二時間!出口で、もう一回会いたいかもって思えたって、嬉しそうに話してた。光るクラゲ、いい仕事するなぁ。

食べ歩きも、かなり強い。手と口がふさがってると、無言が無言じゃなくなるから。湯気の立つ肉まんをはふはふしながら、うまっ!のひとことで間がもつ。味の感想って誰でも言えるし、まず外さない。商店街をぶらぶらするだけで、次どこ入る?って話題が無限にわいてくる。歩くと視点がころころ動くぶん、ネタが尽きにくいんだよね。立ち止まらない会話、というか。

いちばん選ばれがちなカフェだって、ちゃんと武器になる。メニューを二人でのぞき込むだけで、最初のひと言が生まれるから。それ気になる、わたしはこっちかな、って。飲み物が届けば、それ美味しい?が自然に出てくる。店の音楽でも、窓の外の人通りでも、目に入ったものを口にすればいい。間が空いたら、メニューにもう一度逃げ込めばいいしね。共通の話題がいつも手元にある、そう思えたら、もう怖くない。

手を動かす系もいい。陶芸でも、流行りの没入型アートでも。なにかに集中してると、口は案外ゆるむもの。沈黙の正体って、何を話そうっていう焦りでしょ。やることが手元にあれば、その重さがすっと抜ける。黙ってても、一緒に手を動かしてる時間が、ちゃんと会話の代わりになってる。

ここで、言いにくい本音をひとつ。映画は、初デートだと意外と難所だったりする。無難そうに見えて、上映中の二時間はずっと無言だからね。喋れるのは前後の十分くらい。打ち解ける前に解散、なんてことも起きる。観たい作品がピタッと一致してるなら最高なんだけど、間をもたせる保険のつもりで選ぶと、肩透かしを食らいやすい。これも、何組も見てきて気づいたこと。

ちなみに、いちばん固いのは出会って最初の十五分。ここを越えれば、たいてい空気はやわらぐ。だからこそ、序盤に注文や移動みたいな小さな共同作業があると助かるんだ。メニューを選ぶ、券売機の前で迷う、席を探す。その何でもないやりとりが、最初の固さをそっと溶かしてくれる。出だしの十五分を、会話だけで持たせようとしないこと。場所に手伝ってもらえばいい。

別の回に来てくれた女性は、こんなことを言ってた。相手がやたら盛り上げようと頑張ってるのが、かえってしんどかったって。沈黙を埋めようと矢継ぎ早に話を振られて、息が詰まったらしい(泣)。逆に、ゆっくりコーヒーをすすりながら、たまに黙る人のほうが安心できたって。間を怖がってないって伝わると、相手の緊張までほぐれる。沈黙を抱えられる人って、どんな言葉より雄弁なのかもね。

話題に詰まったときも、やっぱり場所が助けてくれる。水族館なら、好きな生き物の話から、休日の過ごし方へ。食べ歩きなら、好物の話が、地元やおすすめの店へ流れていく。場所が、最初のきっかけをそっと用意してくれてるんだ。ゼロからひねり出さなくていいって、思ってるよりずっと心強い。トークの巧さより、どこを選ぶか。そっちのほうが、初回はよっぽど効く。

それでも沈黙は来る。来ていいんだよ。ずっと喋りっぱなしのデートのほうが、あとで思い返すとちょっと不自然だったりするしね。間ができたら、力ずくで埋めにいかない。そばにあるものに、素直に反応するだけ。このコーヒー濃いね、でいい。沈黙を敵あつかいしなくなった瞬間、デートはぐっと軽くなるよ。

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