サークルの打ち上げの帰り道、ひとりの女の子がスマホを握りしめたまま動かなくなった。 「これって…脈なしですよね?」 画面に映ってたのは、気になってる相手から届いた短い一言。お互いに頑張ろうね、って。
たった数文字の差、一緒に頑張ろう、だったら飛び上がれたのに。お互いに、が頭についた途端、壁を一枚はさまれた気分になる。
社会人のイベントサークルを何年もやってると、出会って、近づいて、すれ違って…っていう場面を数えきれないほど見てきたがその現場感覚で言わせてもらうと、この二つの言葉、似てるようでベクトルが真逆を向いてるんだ。
向いてる方向がまるで逆
一緒に頑張ろう、は同じゴールに向かって肩を並べる絵が浮かぶ。相手のすぐ隣に自分がいる。手を伸ばせば届く距離感。
ところがお互いに頑張ろう、はちがう。それぞれの持ち場で、別々に走ろう、っていう響きがある。応援はしてる。エールも送ってる。でも隣にはいない。少し離れた場所から手を振ってる感じ、とでも言えばいいのかな。
恋愛心理の世界では、人は親密さを距離の言葉で無意識に表すと言われてる。近接性なんて呼ばれる考え方で、心理的に近い相手ほど、一緒に、を選びやすい。逆に、ちょっと引きたい気分のとき、するっとお互いに、が口から出てしまう。
やっかいなのは、本人にその自覚があるとは限らないところ。無意識のクセが、言葉の端っこにポロッと出ちゃうわけ。
「一緒に」を選ぶ人の頭の中
うちのイベントで知り合って、そのままゴールインした男性がこんな話をしてくれた。 意中の女性に、就活がんばってね、じゃなく、一緒にがんばろう、って送ったらしい。 「自分も転職活動の真っ最中だったんで、同じ目線で並びたかったんすよね」 その一言がきっかけで距離がグッと縮まって、半年後には付き合ってた(笑)。
一緒に、には相手を巻き込む力がある。あなたと私は同じチーム、っていう小さな宣言に近い。送る側が意識してなくても、この関係を続けたいっていう気持ちがにじみ出る。
ただね、相手によっては重く感じることもある。距離の詰め方が早すぎると、えっ、ってちょっと引かれる。このさじ加減が、まあ難しいんだよなぁ。
「お互いに」を選ぶ人は、全員冷めてるのか
…って言われると、そう単純でもないんだよね。
別の参加者で、30代の女性がいた。気になってる人に、お互い頑張ろうね、って送ったあと、ひとりで頭を抱えてたの。 「距離を置きたかったわけじゃないんです。ただ、相手にプレッシャーをかけたくなくて…」 本人はめいっぱい気遣ったつもり。なのに相手には、突き放されたように映る。このすれ違い、現場でほんとに多い。
お互いに、には大きく二つの顔がある。 ひとつは、本気で距離を取りたいとき。やんわり線を引く合図。 もうひとつは、相手を尊重して、あえて踏み込まないとき。むしろ好意の裏返し。
困るのは、文面だけじゃどっちの顔か見分けがつかないこと。だから数文字で別れを確信して落ち込むのは、正直ちょっと気が早い。
おもしろいのが、ここに男女のクセがうっすら出ること。現場で見てる範囲だと、女性は気遣いとして、お互いに、を選ぶ人がやや多め。重く思われたくない、っていうブレーキが先に立つみたい。男性側は逆に、本当にスッと身を引くときの合図として使う人が目につく。もちろん全員じゃないし、例外なんていくらでもいる。それでも、相手がどっちのつもりで言ったか想像する手がかりにはなるよ。
同じ言葉でも、場面で意味がガラッと変わる
お互いに頑張ろう、は届いた状況で読みが変わる。
遠距離で、しばらく会えない時期に来たなら。それは別れじゃなく、離れてても繋がっていたい気持ちの裏返しだったりする。会えないぶん、無理に依存させたくない、っていう優しさのことも。 受験や就活の真っただ中なら。相手はただ余裕がないだけ、ってパターンも多い。恋愛モードに入れないタイミング、誰にでもあるしね。 長く付き合ったカップルの倦怠期だと、また話が変わる。慣れの中で、励まし方が雑になってるだけ、ってこともあるから。冷めたサインと決めつける前に、相手の最近の口グセを思い出してみるといい。
ところが、だ。最近そっけない、返信は遅い、会う約束もなんとなく流れる…そういう流れの中での、お互いに、なら話は別。残念だけど、距離を置きたいサインの可能性が上がってくる。
言葉そのものをいくら睨んでも、答えは出てこない。前後の温度。そこを読むほうが、ずっと当たるんだ。
言葉より「温度」を読むって、どういうこと
もうちょっと具体的にいくよ。
見るのは連絡の頻度は前と比べて落ちてないか。返信の長さや絵文字の量はどうか。会おうとしたとき、相手から代案が出てくるか。 代案が出るかどうか、これがけっこう効く。来週は無理だけど再来週なら、って返ってくるなら、温度はまだ残ってる。お互い頑張ろうね、で会話を閉じにきてるなら…ちょっと寂しいサインかもしれない。
ひとつの言葉に全体重を乗せないこと。それまでの積み重ねと並べて、はじめて意味が立ち上がる。
返信を打つ前に、まずひと呼吸
いちばんやりがちな失敗が、不安のまま勢いで返すこと。
どういう意味?って問い詰めたり、急に長文をドバッと送りつけたり。これ、相手の温度より自分の温度が高いときに起きやすい。 「既読がついた瞬間に、めちゃくちゃ考えて打ったんですけど…今思うと重かったなって」 そう苦笑いしてた男性、ひとりやふたりじゃない(笑)。
コツはシンプル。相手のテンションに合わせる。短く来たら、短く返す。軽く来たら、軽く返す。これが地味に、でも確実に効くんだよ。
やめといたほうがいい返し方
避けたい返しがいくつかある。
問い詰める系。それってもう脈なしってこと?みたいなやつ。相手は気まずくなって、余計に引いていく。 重すぎる系。私はあなたと一緒に頑張りたいのに、って気持ちを丸ごとぶつける。タイミングを選ばないと、ただの圧になっちゃう。 そっけなさすぎ系。傷ついた反動で、そっか。の一言だけ返す。これだと相手は、あ、脈なしか、と受け取って、本当に終わる。
どれも、不安がそのまま態度ににじみ出てるパターン。気持ちはめちゃくちゃわかるんだけどね…。ここはぐっとこらえどころ。
もっと近づきたいなら、こう返す
相手の言葉を一回ちゃんと受け止めてから、さりげなく自分を差し込む。
お互い頑張ろうね、に対して。 うん、頑張ろう!落ち着いたら近況報告会しようよ、くらいの軽さで。 別々に頑張る前提は受け入れつつ、次に会う口実をそっと置いておく。押しつけない。それでも縁の糸はちゃんと握っておく。
肝心なのは、相手が引いた線を否定しないこと。線は踏み越えず、扉だけは開けておく。この塩梅がうまい人は、するする距離を縮めていくんだよなぁ。
今はそっとしておきたい、というときは
ちょっと様子を見たい気分のときもあるよね。
そういうときは、明るく、短く。 ありがとう、〇〇も無理しないでね! これで十分。重くないし、感じもいい。相手の頭の中に、また連絡してもいい人、としてちゃんと残る。
恋愛って、押し引きのうち引きを上手にやれる人が、結局うまくいくことが多い気がするんだ。焦って距離を詰めにいくより、心地いい余白を残すほう。モヤモヤを抱えて空回りするより、よっぽど健やかでしょ。

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