金曜の夜、イベントの片付けをしていたら、参加者の女性がぽつりと話しかけてきた。あのテーブルにいた彼、みんなに優しいし、私にもめちゃくちゃ優しいのに、二人で会おうって言うと、なんだかするっとかわされちゃうんですよね、と。声はやわらかいのに、目だけが少し泳いでた。ああ、またこの相談か…。
うちのサークルは社会人向けのイベントを毎月まわしていて、女性の口から何度も出てくる存在がいる。優しいのに、つかめない男。世間で罪な男と呼ばれるタイプ。今日はその正体と、もし本気で振り向かせたいならどう動けばいいのか、この目でみてきたことを、そのまま書いていく。
罪な男って、そもそも悪人なの?
まず誤解を解いておきたいんだけど、罪な男イコール性格の悪いプレイボーイ、とは限らない。実際に会って話すと、むしろ感じのいい人が多かったりする。
ざっくり二種類いてね。ひとつは、モテる自覚があって、気を持たせる態度を武器として使っているタイプ。もうひとつが厄介で、本人にまったく悪気がない。ただ親切にしているだけなのに、受け取った相手が勝手に期待してしまう、無自覚型。後者のほうが、じつは女性を深く沼らせる。だって、嘘をついている顔をしていないんだもん。
心理学に好意の返報性という考え方がある。人は好意を向けられると、その相手に好意を返したくなるという性質。罪な男はこれを、狙ってか天然でか、絶妙に発動させてくる。優しさの残高だけが積み上がって、こっちの気持ちだけが前のめりになっていく感じ。
やっかいなのは、その優しさにムラがあること。ずっと甘いわけじゃなくて、急にそっけなくなったり、また構ってきたり。報酬が不規則に与えられるほど、人はその行動にのめり込む、という心理のクセがある。ギャンブルがやめられない仕組みと、じつは地続き。連絡が来る日と来ない日があるからこそ、来た時の嬉しさが跳ね上がる。罪な男の沼が深いのは、彼が緻密に計算しているというより、この脳のクセを無意識に突いているからなんだよね。
じゃあ彼らは何が欲しくてそんなことをするのか。話を聞いていると、根っこはさみしさだったりする。誰かに必要とされている実感が、ほんの少し足りない。女性がときめいてくれる瞬間だけ、自分の価値を確かめられる。刺激が欲しいだけの人もいれば、断るのが苦手で、気づいたら全員にいい顔をしていた、という不器用な人もいる。悪気の濃さはそれぞれでも、共通するのは、相手の人生ごと引き受ける覚悟までは、まだ持てていないってこと。
現場で見えた、罪な男に共通する空気
イベント中、彼らには共通の匂いがある。ひとつずつは平凡なのに、重なると効いてくる。
連絡がとにかくマメ。男の人は返信が遅い印象があるぶん、ぽんぽん返ってくると、あれ、私だけ特別かも?って錯覚しちゃうよね。ところが罪な男の画面の向こうでは、同じテンポの会話が何人ともやりとりされてたりする。
褒めるのがうまい。髪切った?とか、その服いいね、とか、変化に気づくのが早い。会話の広げ方が軽やかで、一緒にいる時間がふわっと過ぎていく。だから場が盛り上がるし、女性は自分に気があると受け取る。なのに肝心のところで、彼は自分からは踏み込まない。好きとも、付き合おうとも言わない。その手前でずっと止まってるの。
言葉が曖昧なのも彼ららしい。君といると落ち着くな、みたいなセリフを置いていく。恋なのか友情なのか、受け手の解釈にゆだねる言い方。反応がよければ距離を詰め、微妙ならすっと身を引く。相手の出方をうかがいながら、自分は安全地帯から動かない。ずるいよねぇ、正直(笑)。
懐に入るのがうまくてね。実は誰にも言ってないんだけど、って弱みをそっと見せてくる。打ち明けられると、女性は自分だけが特別に心を開いてもらえたと感じる。ふたりの秘密みたいな空気が、一瞬で心を近づけるの。ところが同じ弱みを、別の子も聞かされていたりするから、この手のあるあるは油断できないやつ。
見落としがちなんだけど、彼の優しさが自分だけに向いているのか、そこも見てみて。脈ありの男性は、好きな人にだけ熱量が上がる。罪な男は、その場にいる女性みんなに、同じ温度でにこにこしてる。パーティーの帰りぎわ、彼が別の子にも君にだけは話せる、と耳打ちしていた場面に出くわした時は、うわ…ってなった(笑)。特別扱いに見えて、その実、全方位。そこに気づけると、目の前の甘さを冷静に眺められるようになる。
で、これは本気なの?遊びなの?
みんなが一番知りたいのはここ。相談してくる女性の九割は、特徴が知りたいわけじゃなくて、この人は私に本気なのかを知りたい。
見分けるコツは、彼が損をする側に回るかどうか。
甘い言葉やこまめな連絡は、相手の機嫌がよくなるだけで、彼自身は痛くもかゆくもない。ノーコストの優しさ。本気度は、そこには出ないの。出るのは、彼が面倒を引き受けるかどうか。予定を具体的に決めて、実際に会うところまで持っていくか。いいカフェあるよ、で会話を終わらせず、じゃあ来週の水曜どう?まで進めるか。ここで急に歯切れが悪くなる人、いるでしょ。
もうひとつ、うちのイベントで観察して確信したことがある。本気の男は、たまに嫌われる勇気を出す。あなたが愚痴をこぼした時、へえ大変だね、と全部に共感して笑ってくれるのは、じつは一番ラクな態度。嫌われたくないだけなの。逆に、それは違うと思うよ、とちゃんと反対してくる人は、あなたに好かれることより、あなたのためを取ってる。意見をぶつけて、相手がどう返すか。そこで彼の本音がぽろっと出る。
未来の話に、あなたが登場するか。この夏どこ行きたい、という雑談に、じゃあ一緒に、が自然に混ざるか。混ざらないなら、彼の設計図にまだあなたはいない。ズキッとするけど、早めに知れたほうがいいよ。
時間も、けっこう正直な物差しになる。思わせぶりだけの関係って、盛り上がりのピークが妙に長引くわりに、一向に前へ進まない。三ヶ月経っても、半年過ぎても、ドキドキの段階に据え置き。本気なら、どこかで彼のほうが、この関係にちゃんと名前をつけたくなる瞬間がくる。それが訪れないまま季節だけ移っていくなら、彼はこの心地よさを、崩したくないだけなのかもしれないね。
それでも好きになっちゃった。本気にさせるには
罪な男だと頭でわかっても、もう好きになってた、というのが現実だよね。
イベントで、あの余裕たっぷりの男が最後に落ちた相手には、はっきりした共通点があった。追わない女性。正しくは、彼の気のある素振りに、いちいち反応しない人。
罪な男は、女性が一喜一憂してくれることを、心のどこかでごほうびにしてる。既読がついた、返信がきた、で揺れる姿が、彼の自尊心を満たすの。だからそのゲームに乗らないだけで、彼のなかであなたの立ち位置が急に変わる。おや、この子は他と違うぞ、と(笑)。
やることはシンプル。彼の連絡ペースに、自分の生活を明け渡さない。返事が来ない時間に、あなたはちゃんと自分の予定を楽しんでいる。会えない週末があっても、平気で充実してる。この、相手がいなくても回っている感じが、彼にはいちばん効くの。追いかけていたはずが、気づけば追いかけられている!みたいな逆転が起きるんだ。
読めなさも武器になる。いつも即レスで、いつも予定を空けている相手には、人は安心しきって、それ以上動かない。たまに返信がゆっくりだったり、その日は先約があって、と軽くかわしたり。彼の頭に、あれ?という余白を残す。その空白を、彼は勝手に埋めにきたくなる。
誘い方にも、ちょっとコツがある。あなたから予定を全部お膳立てしてあげると、彼はまた甘えるだけ。そうじゃなくて、来週この展示に行くんだ、と自分の予定を先に楽しそうに置いておく。行きたいなら、彼のほうから乗ってくる。乗ってこないなら、それはそれで答え合わせ。あなたの世界に彼を招く形にすると、追う側と追われる側が、ゆっくり入れ替わっていくよ。
うちの常連だった女性の話。彼女、最初はもう絵に描いたような追う側でね。彼の予定に自分を全部合わせて、返信が来ないと一日中スマホを握りしめてた。見ていて、こっちがハラハラしたよ。ある時、思いきって一週間、自分の趣味と友だちにだけ時間を注いでみたんだって。連絡も、来たら数時間後にゆるっと返す。すると、それまで週末が読めなかった彼のほうから、今週会えない?って先に連絡がきた。彼女いわく、追うのをやめたら世界が静かになって、初めて彼を落ち着いて見られた、と。落ちたのは、彼のほうだったのかもしれない。
やらかすと一発で冷める、逆効果の動き
ここ、すごく大事なんだけど、みんなが良かれと思ってやることほど、罪な男には裏目に出る。
尽くしすぎ。かいがいしく世話を焼いて、彼の都合に全部合わせて、いつでもオッケーな存在になること。これをやると、あなたは彼のなかで、いつでも手に入る安心枠に固定される。ときめきの反対側。人は簡単に手に入るものを、欲しがらないから。
追いLINEも危ういやつ。返信がないと、どうしたの?怒ってる?って重ねて送っちゃう…(泣)その気持ち、痛いほどわかるよ(私も昔やった…はぁ…)。彼から見ると、それはただの重さで、すっと距離を取られてしまう。
嫉妬をぶつけるのも、罪悪感で縛るのも、ほぼ確実に空回りする。あなたのせいで不安なんだけど、と責めると、男は自分はダメなやつだと感じて、その気まずさから逃げたくなる。かわいそうな私を演じれば会いに来てくれる、というのは幻。演じるほど彼は遠ざかっていく。これまで何度も立ち会ってきた、切ないくらい再現性のあるパターン。縛ろうとする手が、逆に彼を押し出してるんだよね。
ここまで読んで、なんだか駆け引きばっかりだな、と感じたかもしれない。でも、やっていることの中身は、彼を操るテクニックというより、自分の生活を彼に握らせない、というだけの話。自分の時間を守っている人には、勝手ににじみ出る余裕がある。それこそが、罪な男が唯一かなわないもの。小手先でこしらえた隙は、たぶん見抜かれる。心から満ちている隙だけが、彼の背筋をぴんと伸ばさせるの。
追う価値がある男か、見極める
最後に、冷静な話をひとつ。
すべての罪な男を落としにいく必要はない。無自覚型で、根がまっすぐな人なら、あなたが振る舞いを変えるだけで、ちゃんとこっちを向いてくれることがある。でも、思わせぶりを完全に道具にして、何人もの女性を並行して転がすことに快感を覚えているタイプ。この人を本気にさせようと消耗するのは、底の抜けたグラスに水を注ぎ続けるようなもの。
見極めの手がかりは、あなたが一歩下がった時の反応。追いかけるのをやめた瞬間、興味を持って近づいてくるなら、脈はある。あっさり別の相手にスライドしていくなら、あなたは最初から複数のうちの一人だった。淋しいけど、そこで気づけたことが、次のあなたを守ってくれる。

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