「会いたいって言ったのに、別にいいけど、って返されて」
イベントの帰り道、駅まで並んで歩いてた彼女がぽつりとこぼした。28歳、出会いを探しに来たはずなのに、表情はどこかくたびれてる。聞けば、半年ほど続いてる相手がいるらしい。好きなのに、彼の態度が読めなくてしんどいんだって。
この手の話、サークルをやってると驚くほど集まってくる。冷たくされて、たまに優しくて、また突き放される。心がぐらぐら揺れる。脈ありなのか脈なしなのか、本人ですらもう分からなくなってるんだよね。そりゃ疲れるよ…。
あまのじゃくな男性の冷たさには種類がある。ぜんぶ同じに見えて、中身がまるで違う。ひとつは、好きだからこその試し行為。もうひとつは、ただ雑に扱われてるだけのキープ。症状はそっくりなのに、かかってる病気が別なんだ。
試し行為のほうは、不安の裏返しなんだよね。本当は好き。なのに、愛されてる自信が持てなくて、わざと困らせて反応を確かめちゃう。心理学でいう不安型の愛着に近い動き。俺なんて、って心のどこかで思ってるからこそ、相手の気持ちを何度も測りたくなる。子どもがわざと悪さして親の愛を試す、あれの大人版だと思えば腑に落ちるかな。めんどくさい。でも根っこにあるのは、嫌われたくないっていう恐怖だったりする。
イベントで知り合った別の32歳の女性が、わかりやすい話をしてくれた。相手は同い年の彼。デートに誘うと、一回目は必ず断られるらしい。その日はちょっと無理かも、って。でも二回三回と粘ると、しょうがないなーって顔で結局来る。内心ちょっと嬉しそうなの、バレてるんだけど。会えば普通に楽しそう。で、帰り際にぽろっと、次いつ会える?って向こうから聞いてくる。これ、試し行為の典型的なかたち。冷たいのは入り口だけで、ちゃんと出口に体温があるんだ。
見分けの軸は、まさにそこ。突き放したあとに、フォローがあるかどうか。冷たくした数時間後に、なんでもない連絡をよこしてくる。二人きりになると急に甘えはじめる。自分の弱みやプライベートを、ぽつぽつ打ち明けてくる。そして、こっちが本気で引いたとき、あきらかに焦る。この温度差が揃うなら、彼の冷たさは不器用な好意の表れ。受け取り方を変えるだけで、関係はずいぶん楽になっていく。
見分けのヒントは、人前と二人きりのギャップにも転がってる。試しの彼は、みんなの前ではわざと素っ気ない。好意を悟られるのが怖いから。なのに、ふたりだけになった瞬間、すっと肩の力が抜けて、急に口数が増えたりする。サークルの飲み会でも、よく見かける光景。集団だと君に塩対応な男が、お開きのあとの帰り道だけ、やたら歩くペースを君に合わせてたり。あの落差は、けっこう正直な信号なんだよね。二人きりでも温度が一ミリも動かないなら、そこは静かに考えたほうがいい。
LINEの文面だけで脈を測ろうとする人、ほんと多い。でもあれ、いちばん誤読しやすい場所。試しの彼は、そっけないくせに、なぜか頻度は途切れない。おは、とか、ねむ、とか、一言だけ。素っ気ないのに、毎日ちゃんと来る。あれは、君のこと忘れてないよ、っていう不器用な最低ライン。キープの彼は逆で、たまに長文で優しいのに、ぱたっと三日消える。だから文面の甘さじゃなくて、続いてるかどうかで見る。既読スルーされても、そのあと向こうから話を再開してくるなら脈の側。そのまま自然に流れて消えていくなら、まあ、そういうことなんだと思う。
問題は、もう一方のキープのケース。こっちは出口に体温がない。連絡が来るのは、向こうの都合がいいタイミングだけ。こっちが落ち込んでても素知らぬ顔。プライベートは一切こっちに開いてこない。将来の話題になると、するっと話をすり替える。そして決定的なのが、あなたが離れようとしても、痛くも痒くもなさそうなこと。試しの彼は、引かれると慌てる。キープ扱いの彼は、引かれても、あっそ、で終わる。この差、想像以上に大きいよ。
何百組と現場で見てきて思うのは、女性が深く傷つくのは、たいてい後者なんだよね。あまのじゃくっていう言葉が、雑な扱いの言い訳に使われてるケース。本人は、俺ツンデレだから、なんて軽く言う。でも中身を覗くと、ただあなたに手間をかけたくないだけ。愛情ゆえの試しと、関心の薄い放置。表面の冷たさは同じ顔をしてても、そこに乗ってる気持ちの量がまるで違う。ここを見誤ると、放置を健気に翻訳し続けて、自分だけがすり減っていく。
イベントの常連だった30歳女性は一年近く、彼の、今ひま?にだけ応え続けてた。呼ばれれば飛んでいく。でも自分から誘うと、なんとなくはぐらかされる。誕生日だって、おめでとうのスタンプ一個。それでも、彼あまのじゃくだしって、ずっと自分に言い聞かせてたんだって。潮目が変わったのは、彼女が高熱で寝込んだ夜。心配の連絡、ゼロ。なのに週末になると、暇だから飯行こ、だけがぽんと届いた。その瞬間に、あ、これ試されてたんじゃなくて、ただ都合がよかっただけなんだって、すっと視界が晴れたらしい。
もうひとつの手がかりが、時間軸。最初からあまのじゃくだったのか、付き合ううちに濃くなったのか。出会った頃は素直だったのに、距離が縮まるほど冷たさが増したなら、それは安心の裏返しかもしれない。近づいたぶん、失うのが怖くなって、予防線を張ってる。慣れによる甘えで、ただ雑になっただけ、っていう身も蓋もない場合もあるけどね。どっちなのかは、突き放したあとの彼の動きを見れば、だいたい透けてくる。
ひとつ、強めに置いておきたい線がある。たとえ試し行為だとしても、度を越したものは、もう不器用な愛情じゃない。死にたいとほのめかして気を引く。わざと他の異性の影をちらつかせて不安にさせる。あなたを責めて、思いどおりに動かそうとする。これは優しさの皮をかぶった、こっちの心を削る行為。付き合い続ける義務なんて、どこにもないからね。
さて。脈の正体がうっすら見えてきても、もうとっくに疲れてるよ、って人、多いんじゃないかな。はぁ…って、ため息が漏れるやつ。そのしんどさ、気のせいじゃない。ちゃんと理由がある。
なんで好きなのにこんなに消耗するのか。答えははっきりしてて、彼の本音をずっと翻訳させられてるから。別に、は本当に別になの?それとも会いたいの裏返し?いらない、は遠慮なの、本心なの?この通訳作業を、脳が休みなくフル回転でやってる。彼の機嫌の天気予報を、四六時中チェックしてる感じ。そりゃ電池も切れるって。気持ちの先回りを延々やらされる状態を、心理の世界では感情労働なんて呼んだりするけど、要は心が一秒も丸腰になれない。疲れて当たり前なんだ。
しかも厄介なのが、冷たくされるたびに、私に魅力がないのかな、って矢印が自分の内側に向いちゃうこと。これ、けっこうな罠なんだよね。彼が素直になれないのは、彼の育ちや性格の事情であって、あなたの価値の話じゃない。なのに、いつの間にか自分を採点しはじめる。ズキッとくる。そこ、ちゃんと切り離していいから。彼の不器用さと、あなたの魅力は、別々の引き出しに入ってる。
じゃあどうするか。出発点はひとつ、彼を直そうとしないこと。性格を矯正しようと頑張る人ほど、すり減っていく。変えられるのは相手じゃなくて、自分の境界線の引き方のほう。カウンセリングでもよく出てくる考え方で、ここから先には踏み込ませない、っていう線を自分の中に持つこと。冷たい彼を温めようとするより、自分の足場を整えるほうが、ずっと現実的だよ。

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