MENU

キャバ嬢の彼氏がきついと感じる理由と長続きするカップルの共通点

イベントが終わったあとの、駅までの数百メートル。彼はぽつりとこぼした。

「俺、あの子にとって客以下なんじゃないかなって思う時があって」

30代前半、平日は普通に会社員。うちのサークルの飲み会に何度か顔を出してくれていた人で、その日は珍しく最後まで残っていた。彼女はキャバクラで働いている。付き合って1年半だと言っていた。落ち着いた話し方をする人だっただけに、その一言にざわっとした。

夜職の彼女を持つ男性が口にする悩みと、実際に苦しんでいる場所は、けっこうズレているんだよね。

目次

会えない、連絡がつかない。そこまでは想像がつく

彼女が店に出るのは夜8時から。終わるのは深夜1時、アフターが入れば朝。こっちは9時出社。カレンダーの上ですれ違い続けるわけで、会えないのは仕組みの問題です。

同伴やアフターの線引きが分からない。既読がつかない時間が長い。ブランド物やタクシー代の感覚が違いすぎる。客からもらったというプレゼントが部屋に増えていく。親にも会社の同僚にも話せない。結婚の話をどう切り出せばいいのか、見当がつかない。

このあたりは、イベントで少し話を聞けばだいたい出てきます。本人も自覚しているし、言葉にもできている。

厄介なのは、ここを全部解決したところできつさが消えないこと。

順位をつけられている、という感覚

彼女の職場では、金を払う男が上に立つ。指名して、ボトルを入れて、同伴に連れ出す。その序列の中で、自分は一円も払っていない。

じゃあ俺、あの空間にいたら一番下じゃん

冒頭の彼が言っていたのは、たぶんこれでした。彼女が浮気しているかどうかの話じゃない。自分の値段が、知らない男たちと並べて測られている気がしてならない。

社会的比較の研究では、人は自分の価値を絶対値で把握できず、周囲との相対で判断しがちだと言われます。キャバクラという場所は、その物差しが金額で可視化されてしまう。年収も、地位も、数字として並ぶ。

嫉妬をめぐる心理学の知見も似た方向を指していて、嫉妬の強さは相手を疑う気持ちより、自分への評価が揺らいでいる度合いと結びつきやすい。つまり彼が見ていたのは彼女じゃなくて、自分だったんです。

ここ、当人はまず気づかない。現場で何度か、彼女を信じられない自分が嫌だという言い方を聞いてきたけれど、話をほどいていくと、揺らいでいるのは彼女への信頼じゃなく自分の立ち位置だったりする。

好きだと言われても、確かめる方法がない

うちのイベントには元キャバ嬢の参加者もいる。ある女性が、飲みながらこんなことを言っていた。

「お店で使う言葉と、彼に使う言葉は、自分の中では全然別物なんです。でもそれ、証明する手段がないんですよね」

これに尽きるなあ、と思った。

彼女は好意を伝えることを職業にしている。同じ声、同じ絵文字、同じ間合いで、仕事の相手にも届けている。彼氏に向けられた言葉が本物かどうか、外から見分けるのは無理でしょう。

人は宙ぶらりんの状態に置かれると、その空白を悪いほうの想像で埋めてしまいます。曖昧さに耐える力には個人差があって、耐性が低いほど、確定していない話を確定した悪い話として処理しがちだと指摘されている。

彼が夜中にスマホを握りしめてぐるぐる同じ考えを回してしまうのは、性格が疑り深いからじゃない。空白が大きすぎるだけ。

そもそも愛が本物かどうかなんて、誰にも証明できないんだよね。夜職はその証明不可能性を、目に見える形で突きつけてくるだけなのかもしれない。

何もできない時間帯がある

彼女が働いている数時間、彼は完全に蚊帳の外へ置かれます。連絡もつかない、様子も分からない、何かあっても駆けつけられない。

守るとか支えるとか、そういう役回りが機能しない時間。

この話をしたとき、妙に食いついてきた男性がいました。彼が言ったのは、浮気が怖いんじゃなくて、自分が何もしていない時間があるのが怖い。ずしんと来る言い方だったなあ。

無力感は嫉妬より扱いにくい。相手を問い詰めても消えないし、自分が努力しても埋まらない。時計を見ながら何もできないという状態そのものが、人を削っていく。

夜11時に既読がつかない。その30分をどう過ごすかで、その後の関係が決まっていく気がします。スマホを伏せて風呂に入った人と、5分おきに画面を点けた人。半年後に聞いた話は、けっこうはっきり分かれていました。

いつまで続けるの、が聞けない

彼女は今の収入と今の若さで動いている。こちらは3年後、5年後を見ている。時間の向きが違う。

聞きたいことなんて、ひとつしかない。いつまでこの仕事を続けるつもりなのか。

ところがこの質問、どう包んでも否定として届いてしまう。辞めてほしいという圧に翻訳されて、喧嘩になる。だから飲み込む。飲み込んだまま半年が過ぎて、また飲み込む。

聞けないまま2年経ちました、と話してくれた人がいた。答えの出ない問いを抱えたまま関係を続けるのは、そこそこ体力を使うよね。

心のどこかで、彼女の仕事を認めていない自分

親に紹介できない理由を掘っていくと、世間体だけじゃないことがあります。

彼女の職業を、自分自身が受け入れきれていない。好きなのに、誇れない。この矛盾に気づいた瞬間、多くの人は自己嫌悪へ落ちていく。

イベントに来ていた男性で、彼女の仕事を最後まで周りに言えなかった人がいた。彼女は接客業なんです、と濁していた。後になって本人が、あの言い方をした自分がいちばん最低だった、と苦笑いしていて、なんとも言えない気持ちになりました。

差別する気なんてない。それでも口に出す寸前で体が止まる。この止まり方は本人にしか分からないし、彼女に相談できる種類の話でもない。

相談できる相手がいない

友人に打ち明ければ、返ってくる答えはだいたい決まっている。別れなよ、で終わる。親には言えるはずもない。職場の雑談に出せば空気が変わる。

見てきた中でいちばん消耗が激しかったのは、ここでした。悩みそのものより、悩みを預ける場所がないこと。はぁ、と息を吐きながら、誰にも言えないんですよこれ、と漏らされた夜が何度かある。

不安が行動に出た日

彼女が寝ている隙にスマホを見てしまった。位置情報アプリを入れた。何時に帰ったのか、翌日それとなく確認した。

やってしまった側の話も、正直けっこう耳にします。

確認する側にも言い分はあります。放っておけば不安が膨らむし、聞けば喧嘩になる。逃げ場がない。だから手っ取り早い方向へ手が伸びてしまうわけで、責める気にはならないなあ。

面倒なのは、一度確認して安心しても、その安心が数日しかもたないこと。確かめる行為は不安を減らすというより、確かめないと落ち着けない体質を育ててしまう。強迫的な確認行動について、カウンセリングの現場でよく指摘される構造そのものです。

半年後のイベントで冒頭の彼と再会したとき、彼は別れていた。原因はスマホだった。見たことがバレたんじゃなくて、見てしまった自分に耐えられなくなったらしい。

「彼女のことより、自分が嫌になったんですよね」

長く続いている人たちは、拍子抜けするほど地味なことをしている

もちろん、続いているカップルもいます。話を聞くと、劇的なことは何ひとつやっていない。

いちばん多く聞いたのが、仕事の話を聞かないという選択。

誰が来たとか、どんな話をしたとか、同伴でどこへ行ったとか。聞けば答えは返ってくる。答えが返ってくると、想像するための材料が増える。材料が増えれば、夜中に組み立ててしまうわけで。

ある男性は、3年目に入るタイミングで彼女とルールを決めたと話していた。店の中で起きたことは持ち帰らない。その代わり体調と帰宅時間だけは共有する。線を引いたことで、彼のほうが先に楽になったそうです。

彼女側にも聞いてみたことがある。元キャバ嬢の参加者いわく、根掘り葉掘り聞かれるより、聞かれないほうが結果的に話したくなるとのこと。閉じられていない扉のほうを、人は自分から開けるものらしい。

夜を合わせようとせず、朝で会う

休日を揃えにいって失敗するパターンも見てきました。

彼女は金曜と土曜が稼ぎ時。こちらは平日勤務。カレンダーを無理やり重ねると、どちらかが収入か睡眠を削ることになります。

続いていたカップルは、曜日じゃなく時間帯で合わせていた。彼女の退勤に合わせて朝ごはんを食べる。彼が出社する前の1時間。週に2回、それだけ。

朝マックで30分だけ会う日がいちばん平和だったなあ、と笑っていた人がいた。地味だけど、これがもっとも現実的だったと思う。

お金の線を、先に引いておく

早い段階で決めているカップルが強かったのは、お金の扱いでした。

彼女の月収がこちらを上回ることも普通にあります。デート代を全部持とうとして苦しくなった人、逆に全部出してもらって居心地が悪くなった人、どちらも見てきました。

割合より役割で分けておくと揉めにくい、というのが現場での観察です。食事はこっち、旅行は折半、日常の細かい買い物はそれぞれ。金額の多寡じゃなく担当で切っている人たちは、収入差が開いても関係が崩れにくかった。

貸し借りが発生した瞬間に空気が変わる、というのは何組か見てきて確信に近いものがある。

彼女の店に行くか、行かないか

ここは意見が割れるところ。

一度だけ客として足を運んだ男性がいました。働く姿を見れば安心すると思っていたら、逆だったらしい。隣に座った瞬間、自分へ向けられている笑顔が仕事のそれと区別できなくなったそうです。見なければよかった、と言っていた。

反対に、行ってよかったという人もいる。想像の中で肥大していた同伴やアフターが、実際はもっと事務的だったと。

どちらが正解かは分かりません。ただ共通していたのは、行くにしても事前に彼女へ伝えていたこと。抜き打ちで確かめにいった人の話は、あまり良い着地をしていなかった。

帰ってこられる場所になっている人が強い

愛着の研究には、安全基地という考え方があります。外の世界で消耗しても、そこへ戻れば呼吸が整う場所。それがあるから、人は外へ出ていける。

夜職の彼女にとって彼氏がその位置に収まっているカップルは、かなり安定していました。

干渉するでも、放置するでもない。何時に帰ってきても責めない代わりに、心配していることは伝える。相手を管理しようとした瞬間、この位置からは外れてしまうんだよね。

もうひとつ、続いている男性に共通していたのが、自分の生活がちゃんとあること。趣味、仕事、友人関係。彼女の勤務時間に自分の予定を入れている。手持ち無沙汰にならないようにしている、と言い換えてもいい。

彼女の不在を埋めようとせず、自分の時間として使ってしまう。これができている人は、じわじわ強いよ。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次