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挨拶してくれるようになった男性の本音。脈ありサインの見抜き方

照明を落とし始めた会場の隅で、椅子を畳む音だけが響いていた。先月、平日夜の交流イベントが終わったあと、ひとりの女性参加者がそっと近づいてきて聞いてきた。

「最近、同じ職場の人が急に挨拶してくれるようになったんですけど…これって脈ありですかね」

会場の後片付けをしながら、私は思わず苦笑いした。イベントを何年も運営していると、この手の相談を受けたのは、もう数えきれない。

挨拶なんて、社会人なら誰でもする行為だ。なのに、なぜこんなにも心がざわつくんだろう。

実をいうと、この「挨拶」というテーマ、他のわかりやすいサインに比べると地味に見える。ボディタッチや頻繁な連絡みたいな派手な脈ありサインと違って、挨拶なんて誰でもできる最低限のマナーだ。でも、だからこそ厄介なんだと思う。派手なサインなら誰でも気づくのに、挨拶は日常に溶け込みすぎていて、自惚れかもしれない、勘違いだったら恥ずかしい。そう思って一歩を引いてしまう気持ちもよくわかる。

現場で見てきた男性たちの傾向を、少し話そう。急に挨拶をするようになる理由は、実はひとつじゃない。

ひとつめは、単純に顔と名前を覚えてもらいたいだけのケース。これは正直、脈ありとは言い切れない。誰にでも同じテンションで挨拶しているなら、それは社交性の話であって、恋愛感情とは別物として見たほうがいい。心理学でいう単純接触効果、つまり顔を合わせる回数が増えるほど好感が湧きやすくなる現象を、無意識に利用しているだけのこともある。

ふたつめは、あなたという存在を意識し始めたケース。この場合、挨拶の仕方に妙な癖が出る。目が合った瞬間にすっと逸らしたと思ったら、次の瞬間はやけにじっと見てくる。遠くにいるのに、わざわざ声を張って挨拶することもある。私が見てきた限り、このパターンの男性はたいてい挙動不審になる。近づいてきたと思ったら急に業務連絡みたいな話題を振ってきたり、緊張のせいで声が裏返ったり。ぎこちなさこそ、本気度のサイン。見ていてこっちまでドキッとすることがある。以前見た男性会員は、気になる女性が近くにいるとわかった瞬間、それまで普通に喋っていたのに急に敬語になった。距離を置きたいわけじゃなく、逆に意識しすぎて素の自分を出せなくなるタイプ。ぎこちなさの種類は人それぞれだけど、共通しているのは、いつもの自分でいられなくなるということだ。

みっつめ、意外と見落とされがちなのが好き避けの反動というパターンだ。これまでどこかよそよそしかった男性が、ある日突然、挨拶を返すようになる。避けきれなくなった感情が漏れ出しているケースが多い。好きだからこそ距離を取っていたのに、我慢の限界がきて、せめて挨拶くらいはしようと開き直る。本人に聞くと、素っ気ない態度を取れば取るほど実は意識している証拠だったりする。不器用な優しさというか、好きの裏返しがそのまま行動に出てしまうタイプだ。

さっき話した参加者の子、実はこの好き避けパターンだった。数ヶ月後に連絡が来て、あの人と付き合うことになりましたと報告してくれた。うわ、ちゃんと実ったか、と思わず声が出た。あの日のそわそわした顔、今でも覚えている。

よっつめは、単純に環境や立場が変わったケース。異動してきたばかりで挨拶を覚えている最中だったり、上司の指導で挨拶を徹底するようになっただけだったり。これは恋愛感情とは無関係な、ただの社会人としての変化。がっかりする必要はないけれど、期待しすぎるのも危ない。

愛想の挨拶と好意の挨拶は、声の張り方で見分けられることが多い。愛想は平坦で、誰に対しても同じ音量とスピードで出てくる。好意が混じると、心なしか声のトーンが一段上がったり、逆に照れて小さくなったりする。極端に振れるからこそ、素人目にもわかりやすい。むしろ変化がなさすぎるほうが、脈なしのサインとして参考になる。

面白いのは、こういう心理の出方が場所によって結構違うということ。イベントの現場だと、参加者同士は最初から会話する前提で来ているぶん、挨拶の変化はわりとわかりやすく出る。目を見て名前を呼ぶ、次に会う約束をさりげなく仕込む、そのくらいはっきりしていることが多い。

一方、職場や学校みたいな毎日顔を合わせる環境だと、逆に変化は細かくなる。簡単に距離を詰めたら気まずくなるとわかっているから、男性側も慎重になる。だからこそ、挨拶ひとつの温度差みたいな、小さなところにしか本音が出せなくなる。イベントの延長で知り合った相手より、毎日顔を合わせて逃げ場のない相手のほうが、男性は本音を出すまでに時間がかかる。あなたが今モヤモヤしているのは、たぶんこっちのパターンだと思う。

ただ、ここで釘を刺しておきたいことがある。

挨拶されただけで舞い上がって、いきなり距離を詰めにいく人を何人も見送ってきた。連絡先を急に聞きに行ったり、二人きりに持ち込もうとしたり。相手が引いてしまい、せっかくの芽がしぼんでしまうケースは正直かなり多い。挨拶はただの入り口。ゴールじゃない。

清潔感があって物腰の柔らかい男性会員が、うちのサークルにいたことがある。彼と話した女性はほぼ全員、目を見て名前まで呼んで挨拶してくれるから、自分は特別なのかもと盛り上がった。でも彼は誰に対してもそうだった。単純に育ちの良さがにじみ出るタイプ。何人かが同時に勘違いして、あとで気まずい空気になったこともある。

じゃあ、脈ありっぽいと感じたら次に何をすればいいのか。大きく構える必要はない。挨拶を受け取ったら、そのまま一往復で終わらせない。それだけでいい。「お疲れさまです」と言われたら「お疲れさまです、今日は荷物多いですね」というふうに、目に映った事実をひとこと乗せて返す。天気でも、相手の持ち物でも、なんでもいい。深い会話をしようとしなくていい。ボールを一往復半にするだけで、相手は次も声をかけやすくなる。

これができない人ほど、頭の中で完璧な返しを考えすぎて固まってしまう。現場で見ていると、気の利いたことを言おうとして黙り込むより、多少ぎこちなくても言葉を返した人のほうが、圧倒的に関係が進みやすい。声だけじゃない、表情も地味に効いてくる。無表情で返すのと、目を見て少し口角を上げて返すのとでは、同じ言葉でも伝わる温度がまるで違う。口角をひとつ上げる。それくらいの意識で十分だ。

見極めにどれくらいかければいいのか、これもよく聞かれる。私の感覚だと、三週間から一ヶ月。これくらい様子を見れば、単なる気まぐれか、続いている好意かの見分けがつく。焦って一週間で結論を出そうとすると、その日たまたま機嫌がよかっただけの一回に振り回されてしまうからね。

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