金曜の夜、貸し切りにした小さなバルの隅で、ひとりの男性がスマホを握ったまま10分くらい固まってた。画面に映るのは、さっき連絡先を交換したばかりの女性とのトーク。打っては消し、打っては消し…声をかけたら、彼はぼそっと言った。映画に誘いたいんですけど、なんて送れば引かれませんか、って。
誘い文句を探してる人がほんとうに困ってるのは、言葉そのものじゃなく断られて気まずくなること、今ある関係を壊すこと。だからここでは、映画への誘い方だけじゃなく、傷つかずにふたりの距離を進めるやり方まで、会場で見たまま話していくね。
そもそも、なんで映画がちょうどいいのか
映画が最初の一歩に選ばれる理由、みんなうっすら分かってると思う。ずっと喋り続けなくていい。沈黙が気まずくならないし、時間も2時間くらいで区切られてて、終わりが見えてる。まだお互いの温度がわからない相手には、この気楽さがありがたいわけ。
ただ、たくさんの成立を見てきて気づいたことがある。映画そのものは、意外と恋を進めない。暗い部屋で並んで前だけ向いてるんだから、まあ当然だよね。効いてくるのは上映前のちょっとした待ち時間と、観終わったあとの余韻でしゃべる時間。あそこでふたりの距離がじわっと近づく。映画は会話のための口実で、主役じゃないんだ。ここを取り違えると、作品はしっかり観たのに手応えゼロ、という切ない夜になる(泣)。
以前、映画のあとに近くの喫茶店で1時間だけ話した、というふたりがいた。作品の感想から、好きな音楽、休みの日の過ごし方…気づけば話が止まらなくて、その日のうちに次の約束まで決まってたの。効いてたのは映画じゃなくて、そのあとの1時間のほう。本人たちも後日、あのお茶がなかったら進んでなかったと思う、って笑ってた。
だから誘う段階で、観たあとにお茶でも、っていう余白をそっと残しておく。それだけで当日の空気がまるで変わるよ。
断られる誘い方には、だいたい共通点がある
うちの会の二次会で、こんな相談をされたことがある。3回誘って3回とも、予定あるって流された、と。送った文面を見せてもらったら、来週の土曜、絶対空けといてね、映画行こう、と書いてあった。はぁ…と、こっちまでため息が出た。これ、断りようがないんだよね。相手に逃げる隙間がない。
人は退路のない誘いに、ときめくより先に身構える。付き合ってもいない相手からの、外堀を埋めるような言い方は、好意よりも圧に感じられちゃう。だから、もし予定が合えばなんだけど、くらいの余地をわざと空けておく。断ってもいいよ、という余裕をこっちが見せると、逆に相手は乗りやすくなる。妙な話だけど、何度も見てきた。
もうひとつ、これは切なかったやつ。ある男性が、勇気をふりしぼって長文を送ったんだ。この映画をあなたと観たい理由が、便箋みたいにびっしり。(想いは伝わるんだけど…)読んでる女性の表情が、だんだん引きつっていったのを覚えてる。重さは、量じゃなくて圧で決まる。短くても、逃げ場のある一言のほうが、ずっと届くんだよ。
自信のなさが透けるのも、もったいないパターンね。忙しかったら全然いいから、という前置きを積み重ねると、相手まで気をつかって疲れちゃう。ある女性参加者がぽろっと言ってた。謝られながら誘われると、こっちが悪いことしてる気分になる、って。なるほどなあ…。申し訳なさそうに誘うほど、返事は重くなる。
下心は隠せ、ってよく言うけど、隠すというより、相手を対等な人として見てるかが滲むだけ。品よく誘える人は、たいていモテてた。
誘うなら、いつ送るのがいいか
これ、地味に勝負どころなんだよね。当日や前日にいきなり送っても、もう予定が埋まってることが多い。かといって2週間も前だと、いいよ、と言われても直前に忘れられがち。会場で見てた限り、2〜3日前くらいがいちばんすんなり決まってた。週の半ばに、今週末どうしてる?って軽く聞く。この間合いが、相手にもこっちにも優しい。あと、相手が疲れてそうな夜や、返信が途切れがちなときは避ける。忙しいと言ってる人に重ねて誘うと、自分勝手な人、という印象だけが残っちゃうからね。
関係の距離で、正解の誘い方は変わる
同じ映画の誘いでも、相手との近さで正解はまるっきり変わる。知り合って日が浅いなら、いきなり映画は少し早い。まず、あの作品気になってるんですよね、と話題を挟んで、相手が乗ってきてから誘う。反応が薄ければ、無理に踏み込まない。この見極めが雑な人ほど、空回りしてた。
もうLINEが続いてて、軽い冗談も通じる仲なら、話はうんとシンプルでいい。あれ観たくない?の一言で足りる。むしろ凝った長文のほうが、急にどうしたの?って身構えられる。近いほど言葉は短く、遠いほど助走をつける。この感覚さえ持っておけば、そうそう外さないよ。
友達期間が長い相手は、いちばん勇気がいるやつ(笑)。壊したくないから動けない、その気持ちはよくわかる。ただ現場で見てると、感想を言い合いたいから、という理由を添えて誘った人は、わりと自然に前へ進んでた。恋の匂いをちょっと薄めつつ、ふたりで出かける口実にはなる。温度がちょうどいいんだよね。
女性から誘うのは、むしろ武器になる
ここ、けっこう誤解されてる。女性から誘うのははしたない、みたいな空気、まだ少し残ってるでしょ。でもイベントを回してきた実感でいうと、女性発信の誘いは、びっくりするほど通る。
理由は単純。男の人って、案外誘われ慣れてない。だから誘われた瞬間、ちょっと舞い上がっちゃう(笑)。わざわざ断る口実を探す人のほうが少ないんだ。もじもじ待ってる時間、もったいないくらいだよ!
常連だった女性を、ここではユカさんと呼ばせてもらう。彼女は気になってた男性に、この映画ひとりだと寂しいから付き合ってよ、と送った。返事はあっさりOK。数ヶ月して、ふたりで挨拶に来てくれたっけ。あの誘い方、ずるいくらい効くんだよね。ひとりじゃ行きにくい、という弱さをちらっと見せると、相手は、俺が行かなきゃ、って気持ちになる。頼られて嫌な人は少ない。それを狙わず自然にやってた彼女は、強かったなあ。
逆に、こじらせちゃった例もある。好きすぎて、毎日おはようからおやすみまで送って、そのうえで映画に誘った女性。相手は、重い…と一歩引いちゃった。気持ちが強いほど、出す量はぎゅっと絞ったほうがいい。誘いの一撃に力を集めるイメージ。日頃べったりだと、誘いの特別感が薄れるんだよね。
気をつけたいのは、好意の見せ方の加減。好き好きを前面に押し出すと、引かれる場合もある。かといって事務的すぎると、ただの友達付き合いで終わる。ちょうどいいのは、あなただから誘ってる、がほんのり匂う程度。ほかに行く人いなくて、みたいなオマケっぽい言い方は、しないほうがいい。それ、別の人誘えば?ってスッと冷めた男性の話も聞いたし(苦笑)。あなたを選んだ、という一点だけは、さらっと伝わるようにね。
引きを先に用意しておくのも賢い。タイミング合わなかったら、また今度でいいしね、と軽く添えておけば、もし流れても関係は無傷。押すより先に、引きしろを持っておく感覚だね。
送ったあと、相手の返信のどこを見るか
誘ったあと、脈を測りたくなる気持ち、わかるよ。ただ、返信の速さだけで一喜一憂するのは、ちょっと危うい。仕事や暮らしのリズムで、返事が遅い人なんていくらでもいる。見るべきは、速さより中身のほう。
いいね、と返ってきたあとに、相手から、いつがいい?って日程を出してくれたら、これはかなり前向き。反対に、いいね、で会話が止まって、こっちが動かないと進まないなら、少し様子を見たほうがいい。乗り気なら、向こうから予定をすり合わせにくる。人は行きたいものには、自分から近づいていくからね。
OKが出たら、日程まで一気に詰めちゃうのがコツ。いいね、のあと放置すると、そのまま自然消滅…なんてことも現場ではよく起きた。乗り気なうちに、今週末どう?まで決めちゃう。声で話せる仲ならなおいい。文字だけだと、考える時間が長くなるほど、めんどくさいほうへ気持ちが流れる人がいるから。
とはいえ、これで脈あり脈なしを断定はできない。慎重なだけの人もいるし、興味はあっても予定が本当に立て込んでる時期だってある。一回の反応で答えを出さず、次の会話の温度も重ねて見る。焦って白黒つけにいくと、たいてい足をすくわれるよ。
当日と、その先の話
当日の作品選びは、凝りすぎないほうが無難。付き合う前から誰も知らないマイナー作を出すと、それ何?で話が止まりがち。話題の一本のほうが、事前にも観たあとにも、しゃべるネタになる。マニアックな趣味を披露するのは、もっと打ち解けてからで十分だよね。
チケットを先に取っておいて、席はここでいい?と一言そえる。この小さな気遣いで、相手はずいぶん安心する。売店で何か買う?と聞くのも、自然な会話のきっかけになるよ。沈黙がこわいなら、予告のあいだに、次あれ観たいねって小声で言えるくらいの余裕を持っておくといい。
服装は、気合を入れすぎない清潔感で足りる。頑張りすぎると、こっちの緊張が相手に伝染しちゃう。当日いちばん効くのは、さっき話した上映前と観たあとの時間。感想を、面白かったねで終わらせず、あのシーンどう思った?と広げてみる。そこで会話が弾めば、ちゃんと次につながる。
観たあと、少しだけお茶をする流れを作れると理想的。長すぎず短すぎず、もう少し話したいな、で切り上げるくらいがいい塩梅。全部を出し切らないほうが、また会いたくなるものなんだ。

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