金曜の夜、壁際にひとり、烏龍茶のグラスをずっと握ったまま動かない男の子がいたんだよね。とにかく細い。手首なんて、指で輪っかが作れそうなくらい。その子がぽつりとこぼした。どうせこういう場って、筋肉ある人がモテるんでしょ、と。
社会人の出会いイベントを、かれこれ何年も回してると細身なのを引け目にして、乾杯の前からもう負け戦を決め込んでる男の子には、しょっちゅうぶつかるんだ。
痩せすぎ男子は恋愛対象外なのか。細いままでも愛されるのかっ、変えたいならどうすればっ
細いと恋愛対象外って、本当?
二次会、トイレ待ちの列で女の子3人が彼氏トークに花を咲かせてた。ひとりがこぼす。うちの彼ガリガリでさ、ツーショット撮ると私のほうが大きく写っちゃうのがちょっとね…。あー、それ、めちゃくちゃ本音だよね。細い彼を持つ女性が静かに抱えてるのは、彼の体そのものより、隣に並んだ自分がどう映るか、だったりする。口には出しにくい話。SNSにその一枚を上げるかどうか、指が止まる瞬間があるらしい。
ところが同じ夜、逆サイドのテーブルからは真反対の声が飛んでた。筋肉ムキムキより、すっと細い人のほうが落ち着くわ、って笑ってる子がいた。抱きしめられたとき腕の中にふわっと収まる感じがいいんだと。威圧感がなくて、そばにいて肩の力が抜ける。華奢な男性に惹かれる女性は、あなたが想像してるより全然いる。
不利な場面はある。マッチングアプリの一枚目、合コンの最初の数分。視覚の瞬発力で殴り合うステージでは、がたいのいい人に最初の目線が集まりやすい。これは否定しない。ただね、その先がある。付き合い始めた女性に彼氏の体型をどれくらい気にするか聞くと、返ってくる答えのトップは、最初は気にしたけど今はどうでもいい、なんだよ。第一印象の減点は、時間と中身でひっくり返せる。
忘れられない話がある。元カレがかなり細かったっていう女性が、こう振り返ってた。付き合って二週間で、彼が痩せてることなんて意識の外に消えてたって。代わりに残ってるのは、自分が熱を出した夜にスポーツドリンクとゼリーを抱えて駆けつけてくれたこと。疲れてる日に、今日は家でだらだらしよっかって言ってくれたこと。胸の奥がじんわりあったかくなる、あの感じ。体型の記憶なんて、そういう瞬間にあっさり押し流されてくんだよね。
女性が華奢な男性に頼りなさを感じる瞬間も、実は決まってる。引っ越しで段ボールを持った拍子によろけたとき。猫背でうつむいて声が小さいとき。ぶかぶかの服に体が泳いで、余計にやつれて見えるとき。頼りない、という感想は、痩せそのものというより、その痩せがまとってる空気から生まれてる。守ってほしいという女心の正体も、力こぶの太さじゃなくて、そばにいて安心できるかどうか、だったりするしね。
逆に、同じような体型なのに(え、この子こんなにモテるの?)って驚かされる子がいる。姿勢がまっすぐで、身なりがさっぱりしてて、相手の話をちゃんと拾える。痩せがマイナスに転ぶか、中性的な色気に化けるかは、この辺の一手で分かれてた。友達に、もっといい人いるんじゃない?って言われて心が揺れた女性も見てきたけど、他人のものさしで恋人を選び直した子が、後で本当に幸せそうだった記憶は、あんまりない。
体重を1グラムも変えずに、印象が変わった子の話
うちの会に半年ほど通ってたT君って子がいてね。出会った頃はガリガリで、それを隠したいのか、毎回大きめのパーカーに埋もれてた。ダボっとした布に体が沈んで、実際より貧相に見えてたんだ。
ある回、彼が別人みたいになって現れた。体にちょうど沿うシャツ、足首がすっと抜けたパンツ。体重は一ミリも動いてないのに、スタイルいいねって女の子に言われてる。痩せてる人がジャストサイズをまとうと、むしろラインの綺麗さが前に出る。隠すためのダボ服は、狙いと真逆の結果しか運んでこなかった、というオチ。彼、重ね着も上手くてね。シャツにカーディガン、その上に軽く羽織りを足して、上半身に自然な厚みを作ってた。
服だけじゃない。いつの間にか、聞き役がうまくなってた。自分の話で沈黙を焦って埋めにいくんじゃなく、相手の言葉に相槌をそっと置いて、絶妙なところでふっと笑う。自分の武勇伝ばっかり喋る筋肉質の子より、細くても話をじっと聞いてくれる子のほうが、帰り際にLINE交換してた。これ、うちの会だと数えきれないほど見る構図なんだよね。
一度、彼が女性ふたりに挟まれて話してるテーブルを遠目に見てた。喋りの主導権は完全に女の子側。でも彼、退屈そうにするどころか、相手の一言に、へえ、それでそれで?って前のめりになってた。その空気の作り方、細さとか関係ないんだよなぁ。
体格の心もとなさは、態度と身だしなみでけっこう簡単に塗り替えられる。眉を整える、髪を清潔にする、肌をさっぱりさせる、背筋を伸ばす、話す速度を少し落とす。どれもジムに通わなくても今夜からいじれる部分。逆に、どんなに鍛え上げても、姿勢が崩れて感じが悪ければ全部台無し。痩せてることに落ち込む前に、手つかずの伸びしろがこんなに転がってる、って話。
それでも体を変えたいなら、太れない理由から
細さを活かすのとは別に、単純にもう少し厚みが欲しい人もいるよね。好きでガリガリになったわけじゃない、食べても増えない、あの苦しさを軽く扱うつもりはない。うちのイベントでも、健康診断の数値が気になって本気で増量に振り切った子が何人もいた。
食べてるのに太れない。これ、体質のひとことで片づけられがちなんだけど、実際にカロリーを記録すると、思ってるほど食べてない人がほとんどなんだ。本人はがっつり食べてるつもり。でも消費に対して足りてない。体重が増える条件はいたってシンプルで、一日の摂取カロリーが消費カロリーを上回る状態を、日をまたいで続けること。脂肪は1キロあたりおよそ7200キロカロリー。3キロ増やしたいなら、ざっくり2万キロカロリー以上を余らせないといけない計算になる。一日どか食いした程度じゃ、体重計は動かないわけ。ちなみに、自分が一日に何キロカロリー摂れてるか、まず二週間ほどアプリで可視化してみると、足りてなさに愕然とする人が多い。感覚は驚くほどあてにならないのよ。タバコを吸ってる人は、代謝が上がって食欲も落ちるから、増量とは正直ぶつかる。
やり方も、高カロリーをただ詰め込むのとは違うんだ。胃が小さいというより、痩せ型の人は脳が早めに満腹の合図を鳴らしやすい。だから一回でドカンと食べようとすると、体が拒んでうっとなる。三食を五回、六回に割って、間隔を空けすぎずこまめに入れるほうが、合計の量は伸びていく。おにぎり、ゆで卵、バナナ、ナッツを合間にもりもり挟んでいく感じ。毎日無理やり押し込んで胃腸が疲れてきたら、一日だけ量を落として内臓を休ませると、翌日からまた食べられるようになったりもする。
中身も見てあげてほしい。脂肪だけで増やすと、お腹まわりだけ出た締まりのない太り方になる。糖質でエネルギーをちゃんと確保しつつ、たんぱく質は体重の二倍グラムを目安に狙う。白米やうどんみたいに血糖を上げやすいものをうまく使えば、栄養が体に取り込まれやすい。ここに高重量の筋トレを重ねると、増えた分が脂肪じゃなく筋肉に乗る。胸、背中、脚っていう大きい筋肉から攻めると、見た目が変わるのも早いよ。有酸素をやりすぎると、せっかく足したカロリーを燃やしちゃうから、増量期は軽めにね。ひょろっとした一本の線が、少しずつ厚みのあるシルエットに変わっていく。
見落とされがちなのが睡眠。筋肉が育つのも、体が組み立て直されるのも、寝てる間なんだ。七時間から九時間しっかり眠ると、成長ホルモンやテストステロンが出て、増量を後押ししてくれる。逆に寝不足だと、ストレスホルモンが増えて筋肉が削られていく。夜ふかしと増量は、そもそも相性が悪いのよ。ストレスで食欲が落ちてる人は、そこをほぐすのが先だったりもする。
一度にたくさん食べられない人には、プロテインやウエイトゲイナーが現実的な相棒になる。固形で追いきれないカロリーとたんぱく質を、液体でするっと足せるからね。食べても栄養が素通りしていく感覚があるなら、消化酵素のサプリで吸収を底上げする手もある。ただし、これは補助でしかない。プロテインを飲んでるから一食抜いてOK、は完全に本末転倒だよ(笑)。土台はふつうのごはん、埋まらない分だけ道具で足す。独学で伸び悩むなら、元ガリガリのトレーナーがいるパーソナルジムに相談してみるのも、遠回りに見えて近道になる。増量はダイエットより難しいと言われるくらい根気がいる。一日で結果は出ない。でも、正しい積み方をすれば体はちゃんと応えてくれるよ。
さっきの、増量に挑んでた子。一年かけて56キロから68キロまで増えた。久しぶりにイベントへ顔を出したとき、体つきより先に、まとう空気が変わってたのが印象に残ってる。妙に堂々としてた。彼女ができたのは、その少しあと。12キロ増えたから選ばれた、というより、自分を変えきったっていう手応えが、そのまま自信ににじみ出てたんだよね。

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