「あの人、私のこと好きなのかな。それとも、ただの財布…?」
イベントの帰り道、自販機の前でそうつぶやいた女性がいた。三十代前半。優しくて、気配り上手で、誰が見ても感じのいい人。なのに恋愛の話になると、決まってこう続くんだよね。デート代はほぼ自分持ち。相手がピンチのたびにお金を貸して、返ってきたためしがない。
もう、うっすら気づいてる、この関係、どこか歪んでるぞ。目の前の相手が、自分を見てるのか、それとも口座残高を見てるのか。
社会人向けのイベントサークルを運営してきて、私はかれこれ何百人という出会いと別れを、すぐ横で見てきた。その中で、財布にされやすい人には、驚くほど似た空気があったんだ。今日はそれを、男女それぞれの傾向と、相手を見抜くサインの両面から、現場で見たまま書いていく。
奢りたがる男性ほど、なぜか続かない
まずは男性から。金づるポジションにハマりやすい人には、いくつかの顔がある。
一番わかりやすいのが、奢ることを愛情だと信じてるタイプ。うちのイベントに毎回来ていた三十代の男性が、まさにそうだった。飲み会では、いつも真っ先に「今日は俺が出すよ」と伝票を抱える。高いコースをテーブルに勧める。二次会も、タクシー代も、ぜんぶ彼。かっこよかったよ、正直。でも女性たちが彼に本気になることは、ついぞなかった。
なぜだと思う?お金を出す速さと、心の距離が、まるで比例してなかったから。彼にとって支払いは、沈黙を埋めるための保険みたいなものだった。会話が途切れるのが、こわい。だから財布を開く。その気配は、受け取る側にちゃんと届く。ごちそうさま、とは言われても、また会いたい、にはつながらない。
見栄で払う人。モテたい一心で財布を開く人。断るのが気まずくて、つい手が出ちゃう人だっている。動機はそれぞれでも、同じなんだ。自分の中身に自信がないぶんを、金額で埋めようとしてるんだよね。
あと、プレゼント攻めの人もいる。記念日でもないのにブランド物を渡して、喜ぶ顔を見て、ようやく自分の価値を確かめる。もらう側は最初こそ嬉しい。でも、だんだん重くなる。その気前のよさに気づいた誰かが、狙って寄ってくることもあるから油断できない。
もう一つ多いのが、優しすぎて断れないタイプ。これがけっこう厄介で…。「ちょっとだけ貸して」のちょっとだけが、気づけば何十万に化けてる人を、何人も見てきた。彼らは相手を嫌いになれない。嫌われるのが、それ以上に耐えられないから。ノーと言った瞬間に関係が終わる気がして、ズルズルと差し出し続ける。ここには見捨てられ不安っていう、根の深い心理が絡んでる。
尽くす女性の優しさが、そっくり養分にされるとき
女性側にも、はっきりした傾向がある。
尽くすのが好きな人。これ自体は、まったく悪いことじゃない。むしろ素敵な資質だと思う。ただ、相手を間違えると、その優しさがまるっと吸い上げられてしまう。
うちのイベントで知り合った、二十代後半の女性の話。彼女は、夢を追ってるという男性に惹かれた。バンドやってる、起業の準備中、そういう匂いに弱かったんだって。最初はデート代を半分ずつ。そのうち「今月ピンチでさ」と言われ、家賃を立て替えるようになる。楽器の頭金も出した。彼女いわく「私が支えなきゃ、この人ダメになっちゃうから」。うわ、それ危ないやつ…って、聞いてて胸がざわついた。
これは共依存に片足を突っ込んだ状態に近い。相手の弱さを、自分の存在意義にすり替えてしまう。彼が困ってくれるからこそ、必要とされてると感じられる。だから無意識に、彼が自立しない方向をそっと選んでしまうことすらある。やるせないよね、ほんとに。
もう一つのパターンが、自己肯定感が低めの人。容姿とか性格とか、なにかしらで自分に点数をつけられずにいて、お金くらいしか差し出せるものがない、と思い込んでる。だからお金を出すことで、そばにいる理由を確保しようとする。その健気さに、相手はあっさり乗っかるわけ。
女性がやられやすいのが、君だけが分かってくれる、っていう殺し文句。周りは誰も俺を理解しない、でも君は違う。そう言われると、自分だけが選ばれた気がして、放っておけなくなる。で、気づけばその特別枠の維持費を、ぜんぶ自分が払ってる。この人には私しかいない、が口ぐせになってきたら、一度だけ深呼吸したほうがいい。
女性の場合、母性とか献身とか、世間から褒められやすい言葉で美化されがちなぶん、抜け出すのが逆に難しかったりする。周りも「いい彼女だね」なんて言うしさ。
相手が金目当てかどうか、ここでわかる
さて。自分の傾向が見えてきたところで、本題。目の前のこの人は、私を見てるのか、私の財布を見てるのか。数えきれない組み合わせを横で見てきて、養分にしてくる側には、共通の足あとがあった。
連絡が来るのが、いつも必要なときだけ。これがまず、いちばんわかりやすい。普段は既読無視ぎみなのに、金欠のとき、車を出してほしいとき、泊まる場所がほしいときだけ、急に甘くなる。愛情の濃さが、こっちの利用価値とぴたりと連動してる。ゾッとするくらい正確に。
お金の話が、やたら早い段階で出てくるのも要注意。出会って間もないのに、自分がどれだけ困ってるかの身の上話が始まる。借金がある、親が病気、事業がこけた。同情を誘う物語は、財布のひもを緩める前フリだったりするから。
それと、お金を頼む直前に、妙にやさしくなる人。急に褒めちぎってきたり、二人の将来を語りだしたり。気分が最高潮まで上がったところで、スッと本題が差し込まれる。これは心理学でいう間欠強化に近い動き。たまにしかもらえない甘さだからこそ、人はそれを追いかけて、多少の無理を飲んでしまう。負けを取り返そうと台の前を離れられない、あの感覚と同じ仕組みらしい。
返す約束が、いつもふわっとしてるのも見逃せない。「今度まとめて返すから」の“今度”に、日付が入ってたことは一度もない。しかも、こっちが支払いを渋った瞬間、態度がガラッと変わる。不機嫌になる、責めてくる、あるいは急に冷たくなる。お金を断っただけで愛情が引っ込むなら、その正体は、もう見えてるよね。
最初は数百円のコンビニ会計から始まるのも、この手の入り口。ワンコインなら、まあいっか、で流せてしまう。そこを起点に、金額はじわじわ上がっていく。お湯の温度を少しずつ上げられるカエルみたいに、熱いと気づいたときには、もう腰まで浸かってるってわけ。
最近だと、恋愛の顔をした投資や副業の勧誘も増えてきた。一緒に稼ごう、いい話があるんだ、って。甘い関係と儲け話が混ざってきたら、いったん立ち止まったほうがいい。うちのイベントでも、その手の出会いで痛い目にあった参加者が、正直けっこういるから。
それと、意外と見落とすのが、二人の思い出が増えないこと。お金はどんどん出ていくのに、旅行の写真一枚も、記念日の記憶も残らない。立て替えと督促だけが積み上がる関係って、どこか物置みたいだよね。付き合いが長いのに、相手の友達にも家族にも一度も会わせてもらえてないなら、そこも黄色信号。あなたを自分の世界に紹介する気がない人は、あなたを関係の備品くらいにしか見てないのかも。
うちのサークルの常連だった男性が、こんな話をしてくれた。マッチングで知り合った女性と、いい感じになった。連絡もマメで、会えば楽しい。ところが会うたび、なぜか全額こっち持ち。ある日、時計を買ってほしいと言われた。やんわり断ったら、翌日から連絡がぴたりと止んだ。彼は苦笑いしてたよ。「あれ、俺のこと一ミリも好きじゃなかったんすね」って。
奢るのは悪じゃない。線を引くのはどこか
ここまで書くと、奢ったら全部アウトなの、と身構える人がいる。ちがうちがう。人を思ってお金を使うのは、むしろ関係を温める行為だよ。線を引くのは、見返りがあるかどうかじゃない。出したあとに、自分の心へ何が残るか。そこなんだよね。
気持ちよく出せて、相手の笑顔でこっちまで満たされるなら、それは贈り物。でも、出したあとにモヤッと澱が残るなら、あるいは出さなきゃ嫌われる、っていう計算が先に立つなら、もう贈り物じゃない。ただの通行料。うちのイベントでも、支払いのたびに顔がふっと曇る人は、たいてい後になって苦しくなってた。財布より先に、自分の気持ちの動きを見てあげてほしい。

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