社会人イベントやってると
「好きな人がいるんですけど、その人とは結婚できなくて…」
って相談されることが多く、このひと言のあとに続く話は、毎回微妙に違う。親の反対だったり、相手がまだ結婚を考えていなかったり、すでに交際相手がいたり。
なぜ一番好きな人と結婚できないのか
イベント参加者のなかで、この悩みを抱えている人に共通していたのは、「理由が複数重なっている」ということ。
ひとつだけなら乗り越えられそうでも、いくつかが同時に立ちはだかると、足がすくんでしまう。
よく出てくる壁は、親の反対、経済的なギャップ、相手のタイミング問題、物理的な距離、年齢差あたり。この中でも一番話が長くなるのは、やっぱり親の反対なんだよなあ。
親に反対された女性のケース
イベントで出会ったAさん(当時32歳)の話。
相手の男性は同い年で、フリーランスのデザイナー。収入は不安定だったけど、Aさんにとっては「この人しかいない」と思えるほど好きだったらしい。
ところが親に紹介した途端、空気が変わった。
「安定した会社に勤めていないと不安」「老後はどうするの」…そういう言葉が矢継ぎ早に出てきて、Aさんはそのまま固まってしまったという。
その後しばらく連絡を避けていたAさんが、イベントに来るようになったのは別れてから半年後。テーブルに運ばれてきたドリンクをじっと見つめながら、「親を説得できなかった自分が弱かっただけかもしれない」とぽつりと言った。
そのひと言、かなり刺さったよね。
弱かったんじゃなくて、親が反対する「理由の形式」に圧倒されてしまっただけで、それは多くの人が経験することだと思う。親の反対というのは、感情論ではなく現実論の顔をして迫ってくるから、正面から受け止めると消耗する。
「縁がない」は本当に縁の問題なのか
「あの人とは縁がなかったのかな」
この言葉、何度聞いたかわからないくらい聞いてきた。でも正直言って、縁という言葉で片付けると何も見えなくなる。
縁がなかったんじゃなくて、どちらかがタイミングを逃したか、どちらかが動けなかったか、あるいは環境という名の見えない圧力に負けたか。そのどれかだと思う。
恋愛心理の観点から見ると、人は関係に「安全感」がないと動けなくなる。心理学者のジョン・ボウルビィが提唱した愛着理論にもあるように、人間は根本的に「失うことへの恐怖」を「得ることへの期待」より強く感じる生き物だ。だから好きな人に向かって動くより、傷つかないように動かないことを選んでしまう。
「縁がなかった」は、その逃げの決断に後から貼った言葉かもしれない。…もちろん、本当に縁がなかったケースもある。ただ、そう決めつけるのは早い。
執着と愛の境界線
イベントで話を聞いていると、ときどき「この人、相手のことが好きというより、その関係性に依存しているんじゃないか」と感じる瞬間がある。
Bさん(当時28歳)は、4年付き合った彼氏と「親に反対されたから」という理由で別れた後も、ずっとその人を引きずっていた。
「今でも彼より好きな人が現れる気がしない」
その言葉だけ聞くと、深い愛情のように聞こえる。でも話が進むにつれて出てきたのは、「彼といるときだけ自分が認められている感じがした」という本音だった。
好きなのは相手じゃなくて、相手との関係で得られていた自己肯定感だった、ということ。
これは本人を責める話じゃない。そういう状態になること自体、珍しくもないんだよね。ただ、そこを整理しないまま「一番好きな人と結婚できなかった」と悩み続けると、本来の問題から目が離れてしまう。
タイミングの問題と年齢への焦り
「待ちすぎた」という後悔は、30代前後の女性から特に多く聞く言葉だ。
相手がまだ結婚を考えていないから、いつか変わるかもしれないから、と待ち続けた結果、気づいたら5年が経っていた、というパターン。
心拍数が上がるのは決断する瞬間だけじゃない。何も決めないまま時間が流れていくことも、静かに体を消耗させる。
「待つ」という選択は、意思決定を先送りしているように見えて、じつはひとつの決断なんよね。「今は動かない」という決断。それ自体が悪いわけじゃないけど、期限を設けずに待ち続けることは、じわじわと選択肢を狭めていく。
何歳までなら現実的な選択肢が残っているか、という問いは冷たく聞こえるかもしれないけど、それを一度自分に問いかけることで初めて「今、動けるか」がわかる。
「好きな人=幸せな結婚相手」ではないという現実
イベントに来る人の中には、「一番好きじゃない人と結婚するなんて無理」と言いながら、数年後に別の人と結婚して、その人のことを心から大切にしている、というケースがある。
Cさん(当時34歳)がまさにそれで、「自分が一番好きだと思っていた人との関係は、刺激的だったけど消耗していた」と笑っていた。(あの笑顔、ちょっとだけ疲れた大人の余裕みたいなものがあって、かっこよかったな)
恋愛感情の強さと、生活を共にする安心感は、別の回路で動いている。ドーパミンが大量に出るほど好きな相手は、日常を一緒に過ごすと摩耗するケースもある。逆に、最初はときめきが少なくても、信頼と安心感が積み重なって深い愛情に変わることも十分ある。
「妥協婚」という言葉があるけど、そこに込められたネガティブな響きはちょっと違うと思う。妥協じゃなくて、選択の軸が変わっただけ。
諦める前にやってみてほしいこと
完全に前に進む前に、一度だけやってみてほしいことがある。
まず、「なぜその人と結婚できないのか」を、感情を抜いて書き出してみること。親の反対なのか、タイミングなのか、相手の意志なのか、自分の行動不足なのか。書いてみると、「あ、これって実は自分が動けばどうにかなる問題だ」と気づくことがある。
次に、その障壁をどれかひとつでも変えられるか考える。親への説得は時間をかければ可能かもしれないし、相手との将来の話は、踏み込んで話せばまだ余地があるかもしれない。
それでも変えられないなら、そこで初めて「縁」という言葉を使うのがちょうどいいんじゃないかと思う。

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