「どうせ身長で切られるんで」
受付でそう笑った彼は162cm。乾杯の輪から、半歩だけ外れて立っていた。
私が運営している社会人サークルのイベントでの一場面。
低身長と恋愛
長所探しの奥にある、足切りへの怖さ
受付の彼に、私は軽く返してしまった。
「身長なんて関係ないですって」
戻ってきたのは苦笑い。
「それ、背が高い人しか言わないんですよ」
(やってしまった…)
耳まで熱くなったのを、今も覚えている。関係ない、は嘘だ。身長を条件に入れる人は実際にいるし。
彼が怖がっていたのは、背の低さそのものとは少し違う。話す前に候補から外されること。中身を見せる順番が、永遠に回ってこない感じ。
気休めの言葉は、彼には届かなかった。
低身長は何cmから?数字より気にし方が効いている
20代から30代の男性の平均は171cm前後、女性は158cm前後。男性は165cm、女性は150cm台前半あたりから、小柄と言われはじめる。
ただ、イベントでは面白いことが起きる。165cmで堂々と笑っている人がいる。168cmなのに、自分は低いと言い張る人も。数字と本人の気にし方が、まるで比例しない!
心理学にスポットライト効果という言葉がある。自分の気になる部分ほど、他人も注目していると見積もりすぎてしまう心のクセ。
本人が照明を当てている場所を、相手は案外見ていないんだよね。目に入っているのは、数センチの差より立ち方や表情のほうだったりする。
女性参加者の本音は、背丈より気にしている様子
打ち上げの席で、女性参加者に聞いてみたことがある。質問はひとつ、背の低い男性は恋愛対象に入るのか。
返ってきた答えは、拍子抜けするほど揃っていた。自分より少し低くても、話して楽しければ忘れる。引っかかるのは、本人が身長の話ばかりするとき。
ある人は、枝豆をつまみながらこう続けた。こっちは気にしてないのに、気にしてるでしょと決めつけられるのが一番つらい、と。
ヒールを履くと追い越してしまう、と気にする声もあった。ここは隠さず書いておくね。それでも、対象外と言い切る人は思っていたより少ない。
背丈で落とされるより、気にしすぎる様子で損をしている。現場で見てきた限り、そちらのほうがずっと多いんだ。
イベント現場で見た、低身長が恋愛で武器になる瞬間
目線が近いと、会話のラリーが途切れない
立食の場では、背の高い人から先に目に入る。これは事実。最初の数分は不利だよ。
流れが変わるのは、席に着いてから。163cmの男性の向かいに座った女性が、帰り際に教えてくれた。見上げなくていいぶん、首も気持ちも楽だったそう。
背の高さは、相手に強さや圧を感じさせやすい。対人印象の研究でも繰り返し報告されてきた。逆に、目線が揃う相手には構えずに済む。
質問が増える。笑い声も大きくなる。気づけば彼女のほうが身を乗り出していたなぁ。
小柄な人の頼もしさは、振れ幅で刺さる
あれはバーベキュー企画の日。重たいクーラーボックスを、突然ひとりで担いだ人がいた。160cmそこそこの、普段は物静かな彼。
近くにいた女性たちの空気が変わった。ドキッ、という音が聞こえた気がする(笑)
低く見積もられた相手が株を上げると、最初から高評価の人より強く好かれる。恋愛心理でゲインロス効果と呼ばれるもの。かわいい、弟みたい、と見られがちな人ほど、この貯金が多いわけ。
力仕事でなくてもいい。店員さんへの注文をすぐ引き受ける。帰りの乗り換えを先に調べておく。頼もしさは、身長とは別の場所に宿るわ。
身長で選ばない相手だけが、最初から残る
これは小柄な参加者本人から教わった見方。161cmの彼は、涼しい顔で言った。
「身長で切る人は、僕の手間を省いてくれてるんです」
(強がりかな)と最初は疑った。ところが彼の周りに集まるのは、話の中身に反応する人ばかり。
条件で人を選ぶ相手は、身長以外でも減点を始めやすい。入口で去ってくれるなら、傷は浅い。
残った相手は、肩書きより会話を見ている。高身長の人が後から時間をかけて行う選別を、先に済ませている状態だね。
小柄な女性が得をする場面と、かわいい止まりの壁
低身長の女性はモテる、とよく言われる。このサークルでも、声をかけられる回数はたしかに多い。
なのに、本人たちの表情は曇りがち。150cmの女性がこぼした一言が、耳から離れなくて。
「かわいいって言われるたび、対象外って聞こえちゃって」
妹扱い、マスコット扱い。好意は集まるのに、恋愛の候補には入れてもらえない感覚。
抜け出していた人には共通点があった。自分の意見を先に言う。お店選びを相手任せにしない。見た目の印象を中身で裏切る。効き方は男性と同じじゃん。
正直、不利になる場面も書いておく
いい話ばかり並べるのは不誠実だから、逆の場面も。
立食パーティーの最初の数分。集合写真の並び順。アプリの条件検索。小柄な人が後回しにされやすいのは、だいたいこの三つ。
見比べてみると、どれも入口の出来事。席に着いて話しはじめた先では、背丈の出番がほとんど残っていない。
入口の数分をどうやり過ごすか。勝負どころは、そこに絞られる。
低身長男子でモテる人と苦戦する人、分かれ道はここ
身長より先に伝わってしまう卑屈さ
苦戦する人には、決まった口癖がある。冒頭の彼もそうだった。
自己紹介で身長の自虐を入れる。相手が笑うと、もう一度重ねる。三度目には、向かいの笑顔が固まっていた(泣)
自虐は、初対面の相手に重い荷物を持たせる挨拶。否定してあげなきゃ、という仕事を渡してしまう。
断られると身構える人ほど、相手を遠ざける振る舞いをとる。自己成就予言という名前までついた流れ。
距離を作っていたのは身長より、切られる前提の態度のほう。正直言って、一番もったいない負け方!
盛るより整える、服のサイズと姿勢
モテている小柄な男性は、身長を盛らない。厚底で数センチ足すより、袖丈と裾を合わせるほうを選ぶ。
大きめの服は、体を服の中で泳がせる。借り物を着た子どもに見えてしまうのよ。肩の位置が合ったシャツ一枚で、同じ人が急に大人びる。
もうひとつは姿勢。背中を丸めて話す165cmより、胸を開いた162cmのほうが大きく映る。フロアの後ろから眺めていると、驚くほど差が出るの。
かわいいと言われたら、むくれずに受け取る
小柄な男性が必ず通る関門が、かわいいの一言。ここでむくれると、弟の席が確定する。
うまい人は、笑って受け取っていた。
「ありがとう。でも今日の店は俺が決めるから」
このひと言で、場の空気が切り替わる。
褒め言葉を否定しない。そのうえで、決める場面を自分から取りにいく。かわいいと頼れるが同居した瞬間、相手の目の色が変わるんだよなぁ。
話す量より、聞き方で覚えてもらう
連絡先をよく聞かれる小柄な男性には、似た癖がある。自分の話をあまりしない。
相手の話を一度受けて、短く返す。そこへ自分のことを少しだけ添える。
打ち明け話には打ち明け話が返ってくる。自己開示の返報性という働き。目線が近いと、この往復が始まりやすいように見える。
背の高さで目立てないなら、記憶に残る場所を変えればいい。帰り道に、あの人と話すと楽だった、と思い出してもらえる側へ。
立って話す場より、座って話す場を選ぶ
運営していて気づいた、地味だけれど効く話。
立食の回と着席の回では、小柄な男性の表情がまるで違う。立っていると、背丈は常に見えている。座ってしまえば、テーブルの上に残るのは顔と声と手元だけ。
料理やボードゲームのように、手を動かす企画はもっと顕著でね。野菜を切る手際、ルールを説明する落ち着き。視線が集まる先が、頭の高さから手元へ移る。
出会いの場を選べるなら、椅子のある場所へ。入口の数分が、まるごと消えるから。
条件検索のない場所へ、戦う場所を移す
アプリで全然マッチしない、という相談をよく受ける。画面の上では、身長は真っ先に比べられる数字。
並べて比べやすい数字ほど、判断の中で重くなる。行動経済学で知られた傾向。条件検索は、ふるいというより改札に近い。切符を見せる前に、扉が閉まってしまう。
対面の場には、その改札がない。声、相づち、気づかい。数字にならないものが先に届く。
まさかの失敗例もひとつ。プロフィールの身長を3cm足していた男性がいてさ。初デートで並んだ瞬間、相手にはすぐ伝わった。彼女が冷めた理由は3cmの差より、嘘をつかれたこと。
身長差カップルの理想と、会場で見た現実
理想の身長差15cmに、合わせなくていい理由
理想の身長差は15cm。雑誌やSNSで何度も見かける数字だよね。
あれは、誰かが配った制服みたいなもの。着なくても誰も困らないし。
イベントで出会って付き合った二人を思い返してみる。差が20cmの組も、ほぼ同じ背丈の組もいた。長く続いている二人に、差の大きさの共通点は見当たらない。似ていたのは、笑うタイミング。
感覚の近い相手に惹かれる、類似性の法則。二人の居心地を左右していたのは、センチより波長だった。
背が低い彼氏はアリか、迷っていた彼女の半年後
イベントで知り合った167cmの女性が、164cmの男性に恋をした。打ち明けてくれた日の彼女は、そわそわと落ち着かない様子。
「好きなんです。でも並ぶと私のほうが大きくて」
(友達に何か言われたらどうしよう)
そんな心の声が、表情に漏れていたな。
意外と、障害は二人の外側にある。友人のひと言、親の反応、ヒールを履けるかどうか。
半年後、彼女はヒールで現れた。彼がこう言ったらしい。
「好きな靴を履いてよ。そのほうが楽しそうだから」
自分の背丈を気にしない男性は、相手の自由を削らない。彼女が惚れ直したのは、きっとそこ。
周りの目が気になるとき、効いたのは笑いだった
彼女のほうが背の高い二人は、からかわれやすい。どっちが彼氏なの、と悪気のない一言が飛んでくる。
かわすのが上手なカップルは、先に自分たちでネタにしていた。高い棚は彼女の担当、狭い場所の探し物は彼の担当。そんな役割分担を、楽しそうに話してくれてさ。
当人たちが笑っていると、周りはそれ以上言えなくなる。いじりが止まるのは、言い返したときより、二人が気にしていないと伝わったとき。
背の差が大きい二人が、静かに工夫していたこと
小柄な女性と背の高い男性。憧れられやすい組み合わせ。とはいえ、当人たちは地味な不便も抱えている。
人混みで声が届かない。歩く速さが合わず、彼女だけ早足になる。
長続きしている二人は、彼のほうから歩幅を落とす。話すときは少しかがむ。座って話せる店を選ぶ。
身長差そのものより、差を埋めにいく動きに愛情が出る。
目線が近い二人の、ささやかにうれしい日常
身長の近いカップルの話は、聞いていて和む。
歩幅が合うから、並んで歩いても二人とも息が上がらない。相合傘なら、どちらの肩も濡れずにおさまる。写真を撮ると、二人の顔が同じ高さに並ぶ。
ある女性の報告には、思わず吹き出した。
「キスのとき背伸びしなくていいの、最高ですよ」
聞いている私のほうが照れるんだけど…笑
見上げる恋に憧れる気持ちもわかる。けれど、同じ高さで同じ景色を見る恋には、あとから効いてくる心地よさがあるもんだよ。

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