試合当日の朝、LINEを送る手が少し止まる。
「今日さ、観戦どう?」って打ち込んで、送信する前に消して、また打ち直して断られるのが怖いというより、誘うたびに彼女の顔が少し曇るのが、胸の奥にじわじわ積もっていくんだよなぁ。
社会人向けのイベントサークルでもこういう話がたまに出てくる。「彼女がスポーツ興味なくて、最近観戦に誘えてないんです」そういうひと言のうしろに、どれだけの葛藤が詰まっているか。今回は、そういう男性たちが実際にどうやって壁を越えたか、あるいは越えられなかったか、リアルな話をもとに書いていく。
まず、「彼女がスポーツ観戦に興味ない」の中身をちゃんと分解するところから始めたい。
スポーツ自体が嫌いなのか、スタジアムの雰囲気が苦手なのか、ルールが分からなくて置いてけぼり感があるのか——実はこの3つ、原因がまったく違う。
サークルの参加者で、プロ野球ファンの彼氏と付き合っていた女性がいた。彼女は「野球が嫌い」だと思い込んでいたけど、話を聞くと「ルールが全然わからなくて、盛り上がるタイミングが読めなくて、ただ立ってる感じが辛かった」と言っていた。ゲームの流れも、なぜ観客が急に立ち上がるのかも、何も分からないまま3時間座っていた、と。そりゃ楽しくないよ、なんでも知ってる前提で連れて行かれてもな…
これ、すごく多いパターン。彼氏側は「好きなものを共有したい」という純粋な気持ちで連れて行く。でも彼女側は「ルールが分からない・感情を共有できない・疲れた・なんか申し訳ない」で終わる。この非対称がすれ違いを生む。
では、「また行きたい」に変わった人たちは、何が違ったのか。
サークルのイベントで知り合った男性、Kさん(30代・会社員)の話。彼はJリーグが趣味で、付き合い始めた彼女を早々にスタジアムへ連れて行った。最初の反応は最悪だったらしい。
「応援がうるさいって言われて、帰り道はずっと無言でした」
そこで彼がやったのは、次のシーズンから観戦のスタイルをまるごと変えること。チケットをゴール裏ではなくバックスタンドに変えた。応援より景色を楽しめる席。試合前に近くのおしゃれなカフェで時間を作って、スタジアムグルメを一緒にリサーチしてから行くようにした。試合中は「今のシュート惜しかったね」と解説するより、「あの選手のユニフォームの番号、実は○番なんだよ」みたいな、スポーツファンじゃなくても引っかかりやすい雑学を自然に混ぜた。
半年後、彼女から「次の試合いつ?」と聞いてきたと言う。スポーツが好きになったわけじゃない。でも「Kくんと行く観戦」が好きになったんだよね。
これ、実はすごく大事な話で。彼女に「スポーツを好きにさせようとすること」と「彼女が楽しめる観戦体験を設計すること」は、似ているようで全然別物なんだよなぁ。
NGパターンも、現場では山ほど見てきた。
一番多いのは、連れて行く前の説明が長すぎるパターン。ルールを事前に全部教えようとして、LINEで長文を送ったり、移動中にずっと解説したり。相手は試合前から「宿題させられてる感」になる。正直言って、サポーターとして育てようとしてる人、けっこう多い笑。
次に多いのが、試合に本気になりすぎるパターン。目の前に彼女がいるのに、ゴールが入った瞬間に立ち上がって大絶叫して、横を向いたら彼女が引いた顔してる。
サークル内で「スポーツ観戦のリベンジデート」という話題が出たとき、複数の男性から出てきたのが「試合が大事か彼女が大事かの優先順位が、自分でもわからなくなってた」という言葉。正直すぎて、ちょっとドキリとした。
競技によっても、最初に連れて行く難易度はけっこう違う。
バスケは試合時間が2時間前後で、得点がバンバン入るから盛り上がりのタイミングが分かりやすい。サッカーは90分間ロースコアで動きが分かりにくいこともあるけど、スタジアムの雰囲気と歌声は独特の迫力がある。野球は長い。3時間超えることもあるし、知識なしだと間延びして感じる。
ただ、野球観戦が彼女に刺さるパターンも見てきた。食べ物が豊富で、席がゆったりしていて、試合の緊張感より「おしゃべりしながら過ごす時間」として楽しめると気づいた女性は案外多い。球場の雰囲気やグルメに先に興味を持つ入口。それで十分なんだよね。
観戦の方法を工夫することとは別の次元で、「趣味が合わないことへの根本的な不安」を抱えている人も多い。
サークルのアフターで、Nさん(20代後半・女性)がこんなことを言っていた。「彼氏のサポーター仲間と試合後に集まるんですけど、私だけずっと話に入れなくて…。楽しそうなのは分かるんです。でも、彼氏にとって私って、その世界のどこにいるんだろうって、帰り道にふと思って」
試合の話じゃなくなってる。もう関係性の話になってる。
こういうとき、男性側は「じゃあ彼女をスポーツ好きにすれば解決」と思いがちだけど、彼女が欲しいのはたぶんそこじゃない。「あなたの世界に私の居場所はあるの?」という問いに、無意識に答えを探している。
じゃあ、「価値観の違い」はどこまで許容できるのか。
これに正解はないし、断言もしない。ただ、サークルで長続きしているカップルを見ていると、共通しているのが「お互いの趣味に参加するかどうかより、相手の熱量を尊重できるかどうか」なんだよなぁ。
彼女がスポーツ観戦に来なくても、「行ってきなよ、楽しんできて」と言える関係が作れているかどうか。試合後に「どうだった?」と聞いてくれる彼女がいるかどうか。逆に、彼氏がちゃんと「スポーツ観戦以外の時間」を彼女と丁寧に過ごしているかどうか。
スポーツが好きか嫌いかより、そっちの方が全然大事じゃんね。
それでも、「一緒に楽しみたい」という気持ちは本物だと思う。
そのための第一歩として、観戦の目的を少し変えてみることをすすめたい。「スポーツを楽しませたい」から「あなたと特別な時間を作りたい」へ。そうすると、競技の選び方も、席の選び方も、試合前後の過ごし方も、全部変わってくる。
Kさんが成功したのは、スポーツの魅力を押し付けるのをやめたからだよね。彼女が喜ぶ瞬間を丁寧に積み上げていったら、気づけば彼女の方から「また行こう」と言い出した。好きなものを誰かに好きになってもらえる瞬間のために、少し戦略的に動いてみることは、全然ダサくないよ。

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