1月の交流会で、25歳の女性が箸を止めたまま動かなくなった夜がある。
クリスマスに2万円のマフラーを渡したそうだ。返ってきたのは3000円くらいのハンドクリームと、コンビニのケーキ。彼女は笑いながら言った。
「別にお金じゃないんですけどね」
その声が、明らかに笑ってなかった。
このセリフ、サークルでたぶん30回以上聞いている。誕生日の翌週、クリスマス明け、ホワイトデーの直後。時期がきれいに揃うんだよね。そして口を揃えて同じ前置きをする。お金じゃないんですけど、と。
でも本当にお金じゃないなら、ここまで引きずらない。金額の話をしているようで、みんな別の何かを数えてる。
値段そのものより、選んだ時間を見ている
さっきの彼女に、もう少し詳しく聞いてみた。
すると出てきたのが、これ。彼は当日の夕方、駅ビルで買ったらしい。しかも本人がそれをそのまま話してしまった。今日仕事帰りに寄ってさ、と。
ずしんときたのは値札じゃなくて、そこだったわけ。
彼女は2ヶ月前から探していた。色で迷って、素材で迷って、店員さんに聞いて、包装まで指定した。その全部が、駅ビルの15分と並べられた瞬間に、なんか薄っぺらく見えちゃったんだって。
心理学でいう互恵性の原理は、贈り物の場面でわかりやすく働く。人は受け取ったものと同じ重さを返そうとするし、返ってこないと関係のバランスが崩れたと感じる。ここで測られているのは金銭よりも、かけた手間と気持ちの量。カウンセリングの現場でも、贈り物の不満は投資量の不一致として語られることが多いと聞く。
つまり、モヤモヤの正体はこれ。
私はこの人に、こんなに時間を使っている。あの人は使っていない。
好きの量が釣り合ってないかも、という不安が、レシート一枚で可視化されちゃったんだよね。しんどいに決まってる。
気にする自分を責めなくていい
もうひとつ、必ず出てくる感情がある。
こんなこと気にする私、浅ましくない?ということ。
だから友達にも言えない。母親にはもっと言えない。それで夜中にスマホで検索する。金額差、相場、これって普通ですか、と打ち込んで、ぐるぐるしたまま朝になる。
わかる。でもね、値段を気にしている人ほど、実は相手の気持ちを疑いたくない人だったりする。疑いたくないから、根拠を探して数字にすがってしまうだけ。
打算的な人は、そもそもモヤモヤしない。黙って距離を取る。
だから、気にしていい。そこを封じ込めると、次のイベントでまた同じ夜が来るだけだから。
カップルのプレゼント相場、実際どのくらい?
サークル参加者に雑談ベースで聞いてきた範囲だと、こんな温度感になる。
20代前半だと、誕生日で5000円から1万円あたりが中心。学生を含むと3000円台も普通にある。20代後半になると1万円から2万円へ上がって、30代は2万円から3万円、記念日が重なる年はもう少し跳ねる。
クリスマスは誕生日より少し高くなりやすい。イルミネーションやディナー代が別で乗るぶん、モノ自体は抑える人もいる。ホワイトデーは3倍返しの呪いがまだ生きていて、バレンタインで見栄を張った人ほど3月に苦しんでいた(笑)。
で、肝心のここ。どこまでの差なら普通なのか。
現場で聞いた感覚だと、2倍以内なら気にならない人がほとんど。3倍を超えたあたりから、口には出さないけど覚えている、という人が急に増える。5倍以上、たとえば2万と3000円みたいな開きになると、その場では笑っても半年後に蒸し返される。ええ、蒸し返されます。実際に見た。
ただし金額差より効くのが、収入差との整合性なんだよね。
彼のほうが年収が低くて5000円。これは納得されやすい。彼のほうが明らかに稼いでいて5000円。これはかなりの確率で燃える。年下でお金がない彼氏には全然平気だったのに、転職して稼ぎ始めた途端に許せなくなった、と話してくれた女性がいて、あれは腑に落ちたなあ。
お金をかけない男性の頭の中、7パターン
責める前に、種類を分けたほうがいい。同じ3000円でも中身が全然違うから。
まず単純に相場を知らないタイプ。これがいちばん多い。男性同士でプレゼントの金額を話す文化がほぼないから、参考データがゼロのまま社会人になる。彼女が2万使ってるなんて発想が存在しない。悪意ゼロで地雷を踏む。
次に、モノに価値を置かないタイプ。自分が物欲薄いから、高いプレゼント自体を無駄遣いだと思ってる。旅行やご飯には普通に出したりする。ここは価値観の違いであって、愛情の欠如とは別物。
3つ目、お金が本当にない人。奨学金の返済、実家への仕送り、親の医療費。言えないまま安いものを選んでる男性、想像より多い。ある30代の参加者が、彼女の誕生日に高いものを買えなくて別れ話になり、返済のことを最後まで言えなかったと話していた。あれはちょっと、聞いていて胸が詰まった。
4つ目が、安心しきってるタイプ。付き合いが2年を超えたあたりから急に手を抜き始める。もう選ばれた気でいるので、努力するという発想が抜け落ちる。これは怠慢であって、嫌いになったわけじゃない。ただ放置すると腐る。
5つ目、センスに自信がなくて逃げてる人。高いものを買って外したら怖い。だから無難で安いものに逃げる。ハンドクリームとバスグッズが多いのはこれ。
6つ目、家庭でお金をかける習慣がなかった人。実家がプレゼント文化ゼロだと、誕生日にケーキだけという育ち方になる。悪気じゃなくて、そもそも標準装備されてない。
そして7つ目。これだけ質が違う。あなたを軽く見ているタイプ。
危ないほうの安さは、こう見分ける
見分ける手がかりは、金額じゃなくて他の場面での財布の開き方にある。
自分の趣味には平気で5万使うのに、彼女には3000円。友達との飲みには即答で出すのに、記念日は割り勘。この非対称が出ている場合は、金銭感覚じゃなくて優先順位の話をしている。
あとは、渡すときの態度。金額が安くても、めっちゃ悩んだんだけど、と前置きして手渡す人は大丈夫。無言でレジ袋のまま渡してくる人は、そわそわする理由が本当にない状態、つまり関心が薄い。
もうひとつの分かれ目が、指摘したあとの反応。ごめん知らなかった、次は考える、と言ってその年の記念日で修正してくる男性は、鈍いだけ。逆に、金で愛情を測るのかと逆ギレしてくるパターン。これは論点をすり替えて自分を守っているだけで、その先も似た形で押し切られる可能性が高い。
伝えるなら、金額の話をしないこと
言い方ひとつで結果が180度変わる。ここは断言してもいい。
失敗するのはこれ。私は2万円出したのに、という言い方。事実だけど、相手には請求書に見える。防御されて終わり。
うまくいっている人はだいたい、こう言ってる。
「一緒に選びに行きたいな、次の誕生日」
金額に一切触れずに、時間をかけてほしいという要求だけを渡す形。実際これで翌年ちゃんと変わった、というカップルを何組か見ている。ハードルが低いし、彼のセンスの問題も同時に解決するからね。
もっと直接的にいくなら、当日じゃなく数週間あとに、軽い雑談として出すのがいい。渡された直後は感情が乗りすぎるし、彼も身構える。落ち着いた金曜の夜、笑いながら、実はちょっと寂しかったんだよね、くらいの温度で。
黙って我慢するのだけは、やめたほうがいい。
来年も同じことが起きて、そのときは3000円の話じゃ済まなくなってるから。
結婚を考えているなら、ここだけ確認して
プレゼントで揉めたカップルの話を追っていくと、数年後に効いてくるのは金額そのものじゃなくて、話し合えたかどうかだったりする。
ケチな彼と結婚して大丈夫か、という不安の答えは、彼が節約家なのか、あなたへの支出だけを渋る人なのかで割れる。見極めたいなら、お金の話を一度ちゃんとしてみるといい。将来いくら貯めたいか、何にお金を使うのが好きか。この会話から逃げる人とは、プレゼント以前の問題が待っているからね。

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