イベントの片づけ中、潰した紙コップを袋に放り込みながら相談を受けたことがある。
「あの人、ずっと後ろで手を組んでたんですけど…私、嫌われてますよね?」
20代後半の女性だった。2時間の交流会で、気になる男性と3回くらい話したらしい。会話は普通に続いた。笑ってもいた。なのに彼の手はずっと背中側。それがどうしても引っかかって、帰りの電車でも考えていたんだって。
先に書いてしまうと、その男性は翌月のイベントで彼女に連絡先を渡している。後ろ手は拒絶じゃなかったわけ。
ただ、彼女がモヤモヤしたのも間違ってはいない。あの姿勢には、確かに読み取れるものがあるから。
後ろで手を組むとき、人の中で起きている5つのこと
背中側で手を合わせる姿勢って、胸とお腹をまるっと相手に開け渡している状態なんだよね。体の急所を隠していない。だから受け取り方が真逆に割れる。
ひとつめは、余裕と自信。校長先生とか、展示会で自分のブースに立つ営業さんとか。その場を自分の領域だと感じている人がとる立ち方。恋愛の場面だと、年上の男性に出やすい。
ふたつめは、緊張を押し隠す動き。これがかなり多い。手が落ち着かなくて、髪を触ったり指を組んだりしそうになる。それを見られたくないから、背中に隠す。心理学では自己接触行動と呼ばれる、不安を鎮めるための無意識のクセ。後ろ手はその隠し場所として使われることがある。冒頭の男性はこれだったっぽい。あとで本人に聞いたら「手汗がやばくて…」と言っていた(笑)。
3つめが、警戒と保留。腕を組むほど強くはないけど、まだ心を開ききっていない状態。話すけど踏み込ませない、という距離のとり方。
4つめは照れ隠し。褒められた直後や、二人きりになった瞬間に急に後ろ手になる人、いるじゃんね。手のやり場を失った合図。
5つめ、単なるクセ。剣道や部活、接客業の立ち方が体に染みついている人。これを心理として読み解こうとすると、全部ズレます。
男性の後ろ手と、女性の後ろ手で意味がずれる
男性が後ろ手に組むときは、自分を大きく見せたい気持ちと、緊張を隠したい気持ちが同居しやすい。特に初対面。胸を張って余裕がある風に見せながら、手のひらは背中でぎゅっと握られている、みたいなことがある。イベントで名刺交換のあと、手だけがそわそわ動いている男性を何度も見てきた。あれは自信じゃないよ、ほぼ確実に。
好意がある相手の前だと、この緊張型は増える。逆に、心底どうでもいい相手には人はそこまで緊張しない。皮肉な話だけど、後ろ手+汗+早口の組み合わせは、脈がある側に振れることのほうが多かった。
女性の後ろ手は、少し性質が違って見える。体をわずかに前に傾けて、上目づかいぎみになる立ち方とセットになることがある。かわいらしく見せる姿勢として、無意識に選ばれているパターン。壁に背をつけて後ろ手、というのもよくある。これは緊張と甘えが混ざっている感じ。
ただ、女性が後ろ手のまま体を斜めにしている場合は、話を切り上げたいサインだったりもする。ここは体の向きで読む。
脈ありと脈なしを分ける7つの視点
姿勢は単体で読まない。周辺情報と束ねる。うちのイベントで観察してきた中で、当たる確率が高かったのがこのあたり。
つま先の向きが最初の1つ。顔は笑っていても、つま先が出口や他のグループを向いているなら、意識はそっちにある。逆に、つま先がまっすぐこちらを指したまま後ろ手なら、話を聞く姿勢としての後ろ手。
2つめ、距離。後ろ手なのに、じりじり距離が縮まっていくならOK。組んだまま半歩下がるなら、壁として使われている。
3つめが視線の戻り。目が合って外れたあと、もう一度戻ってくるか。この往復回数は、好意の量とかなり連動する。
4つめ、質問の量。相手からの質問がゼロなら、姿勢がどうであれ関心は薄い。逆に、脈絡なく「休みの日って何してるんですか」が飛んでくるなら、姿勢は関係なく前向き。
5つめが体の正対。おへそが自分を向いているか。顔だけこちらを向けて、体幹が別方向なら、心は半分よそにある。
6つめ、手の高さ。腰のあたりで軽く組むのはリラックス寄り。背中の高い位置でがっちり握り込んでいるなら緊張が強い。あの位置、けっこう見分けやすいよ。
7つめは別れ際。ここがいちばん嘘をつかない。解散のとき、後ろ手のまま会釈だけで去るのか、手をほどいてこちらに一歩来るのか。関心があると、人は最後に手をほどく。
7つのうち4つ以上が前向きなら、後ろ手は気にしなくていい。2つ以下なら、姿勢よりそっちを直視したほうがいい。
わざとか、体のクセか
歩きながらの後ろ手を見分けるポイントは3つ。
会話の温度がひとつめ。話が弾んでいるのに後ろ手なら、クセ寄り。会話も薄いなら、距離を保ちたい意思がある。
歩く速度と歩幅が2つめ。相手が自分の歩幅に合わせてくれているかどうか。合わせながら後ろ手なら、気遣いはある。すたすた先に行くなら、隣にいたい気持ちは薄い。
3つめは、信号待ちや立ち止まったとき。止まった瞬間に手をほどいて、体をこちらに向けるなら心配ない。止まってもなお組んだままなら、その姿勢は防御として機能している。
ちなみに、荷物を持っている手と反対側だけを後ろに回している人もいて、これは単に持ち方の問題(笑)。カバンの位置まで見ておくと、無駄なドキッを減らせます。
手をつながない理由は、仕草の外側にもある
人前で触れ合うのが苦手なタイプは実在する。特に地元が近い、職場が近い、というだけで手をつながない人は多い。
そもそも、まだ付き合っている認識がない場合。この認識ズレはイベント発の関係でとても起きやすい。何度か会って食事もしたけど、告白のような場面がないまま進んでいるとき、片方は交際中だと思い、もう片方はまだ様子見だったりする。この状態で手をつなぐのは、彼の中では順序が飛んでいる。
過去に振り払われた経験がある人も、警戒する。1回それをやられると、次から手を出せなくなるみたい。うちの参加者で、そう打ち明けてくれた30代の男性がいた。彼は「自分から手を伸ばして拒まれるのが、はっきり言って怖い」と言っていた。後ろ手は、その怖さから手を守る場所でもあるわけ。
姿勢をほどかせるために、実際にやって効いたこと
まず、荷物を持ってもらう。飲み物でも、紙袋でも。手にものを持った瞬間、後ろ手は解除される。ほどけた手はそのまま前にある。これが一番手っ取り早い。
次に、横並びを作る。カフェのカウンター席、水族館、映画。正面で向かい合う席は、緊張しやすい人にとってハードルが高い。横に並ぶと、視線を合わせ続けなくていいぶん、体の緊張がじわじわ抜けていく。実際、交流会でも立食より座席のある形式のほうが、参加者同士の距離が早く縮まった。
3つめ、こちらから小さく触れる。腕を軽くつつく、袖を引く、それくらいで十分。人には触れられた側が反応を返しやすい性質がある。いきなり手を握るより、成功率が高い。
そして、言葉にする。人混みで、はぐれるからと言って手を差し出す。これは断られにくいし、断られたとしても理由が明確だから傷が浅い。うちの参加者で実際に距離が縮まったカップルは、水族館の混雑がきっかけだった、という話をしてくれたよ。

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