平日夜のワイン会が終わり、グラスを片付けていた時のこと。
常連の女性が布巾を握ったまま、ぽつりとこぼしたんだよね。
「媚びない女がモテるって、あれ本当ですか」
きた。この質問、今月だけで何回目だろう
彼女は三十一歳のメーカー勤務。
男性の話には全部笑ってあげる、場の加湿器みたいな人。
連絡先は毎回聞かれるのに、二回目のデートで止まるらしい。
媚びない女性がモテる理由を、イベント現場で見たまま
連絡先を聞かれる人と、また会いたいと言われる人は別だった
運営を始めた頃の私、恥ずかしい勘違いをしてた。
笑顔で相づちが多い女性ほどうまくいく、と信じ込んでいたんだ。
参加者に、もっとリアクション大きめでいきましょうなんて助言までしてさ。
今思い出すと顔から火が出る(泣)
交際まで進んだ人を振り返ると、景色がまるで違う。
数えたわけじゃないから、割合までは言えない。
それでも傾向は見えたよ。
冒頭の彼女のように全部に頷く人は、入口が広い。
連絡先の交換まではマジで早い。
ところが、その先が続かない…。
男性側に後日聞くと、返ってくる言葉がいつも似ている。
「いい子なんだけど、何を考えてるのか分からなくて」
合わせてもらうほど、相手の顔が見えなくなる。
鏡と食事してるみたいだった、と苦笑いした男性までいたなあ。
楽な相手と、惹かれる相手は別の席に座っている。
親しさは、お互いが少しずつ自分を見せ合うことで深まるもの。
全部に頷いている間、彼女の好き嫌いは一つも相手に渡っていなかったわけ。
媚びない女性の特徴は、冷たさではなく態度の変わらなさ
じゃあ、また会いたいと指名されるのはどんな人か。
日曜のボードゲーム会に来ていた、看護師の女性が忘れられない。
人気の男性が好きな映画を熱く語った時、彼女は笑ってこう返した。
「私それ、途中で寝ちゃった。でもどこが好きなの、聞きたい」
場が突然、凍った。
(おいおい大丈夫か…)と、私は胃が縮む思い。
まさかの展開はここから!
その男性、帰り際にそわそわしながら受付まで来てさ。
あの人、次も来ますかって。
彼女はスタッフにも、男性にも、隣の女性にも同じ声のトーンだった。
相手によって自分を塗り替えない人は、言葉の値段が下がらない。
褒められた側が、お世辞じゃないと信じられるんだ。
社会心理学には迎合行動の研究がある。
気に入られる目的が透けた褒め言葉は、割り引かれて届くというもの。
媚びない女性がモテる理由は、そっけなさじゃなく、この信用の貯金。
男性心理から見ると、全部の肯定は接待に映る
男性参加者と飲んでいた夜、耳に残った一言がある。
「全部肯定されると、接待されてる気分になるんですよ」
媚びている側は、相手を持ち上げているつもり。
けれど裏返すと、本音を出したら嫌われると決めつけているんだよね。
あなたは私の本音に耐えられない人でしょう、と告げているのと同じ。
本音を一つ差し出せる人は、相手の器を信じてる。
男性が媚びない女性の隣で感じる心地よさの正体は、結局ここだった。
媚びと愛嬌の違いは、笑顔の行き先で見分けられる
媚びは見返りを待つ笑顔、愛嬌はその場を楽しむ笑顔
媚びるのが苦手な人ほど、この二つを混同してる。
愛嬌まで封印して損をしている人が、意外と多いんだよなぁ。
現場で見分ける目印は、笑顔の行き先。
媚びている人は、笑ったあとに相手の反応を確認する。
好かれたかな、点数は入ったかな、という目の動きがあるの。
狙った相手以外には、声が半音下がるのも特徴かな。
見られている側は、その確認の視線を拾ってしまう。
採点されている気分になる、と話す男性もいた。
愛嬌のある人は笑いっぱなし。
ゲームに負けて悔しがり、料理が来たら歓声を上げ、誰の前でも同じ温度。
見返りの集金に来ない笑顔、と私は呼んでる。
春のバーベキューで焼きそば係を買って出た女性は、今も語り草。
ソースを盛大に焦がして、自分で大笑いしてた(笑)
その日いちばん男性に囲まれていたのは、彼女だったよ。
媚びた瞬間なんて一秒もなかったのに!
アサーションに当てはめると、媚びないの正体が見える
カウンセリングの世界に、アサーションという自己表現の考え方がある。
自分の気持ちも相手の気持ちも、置き去りにしない伝え方のこと。
この物差しを借りると、頭の中が片付くよ。
自分を後回しにして相手に合わせ続ける、これが媚び。
相手を脇に追いやって突っぱねると、可愛げのなさになる。
媚びない人は、自分も相手も両方テーブルに残すんだよね。
強い女を演じる話じゃなかったわけ。
苦手は苦手と言い、嬉しいは嬉しいと言う。それだけ。
映画で寝ちゃったと笑った看護師の彼女が、まさにこれ。
否定で終わらせず、あなたの話は聞きたいと添えていたでしょ。
LINEと店選びに出る、媚びと愛嬌の分かれ道
媚びている時のLINEは、相手の文量や絵文字を鏡写しにしがち。
送ったあとはスマホを裏返して、また表に戻しての繰り返し。
返信待ちで一晩に四十回は画面を見た、と白状した参加者もいる。
(四十回って…数えたのがもう切ない)
愛嬌のある人のLINEは、見つけた面白いものを送って終わり。
返事を回収しに行かないんだ。
店選びも同じ。
何でもいいですは譲っているようで、決める荷物を全部相手に背負わせてる。
二次会でも、何でもいい派の隣は不思議と空席になりがち。
今日は和食の気分です、と言える人の隣だと、男性の肩の力が抜けていく。
追われる女の特徴は、なびかないのに好意を隠さないところ
古い心理実験が教えてくれる、いちばん惹かれる相手
追われる女になりたくて、わざと素っ気なくする人がいる。
正直言って、現場ではほぼ空振りしてた。
恋愛心理の古い実験に、面白い結果があってさ。
男性がいちばん惹かれたのは、誰にでも冷たい女性じゃなかった。
誰にでも愛想のいい女性でもない。
ほかの人には簡単になびかないのに、自分には好意を見せてくれる女性だったの。
半世紀ほど前の実験だから、今の恋愛にそのまま重なるかは分からない。
ただ、会場の隅から見える景色とは一致してるんだよなあ。
イベントで追われている人は、この通りに動いてる。
看護師の彼女も、帰り際に例の男性へ一言残していたと後で聞いた。
「今日いちばん話してて楽しかった」
全員に配る社交辞令とは違う、一人にだけ届く言葉。
媚びないのに、好意は出す。
この組み合わせが、男性の頭の中にじわじわ居座るんだよ。
返信を遅らせる駆け引きは、ただの音信不通になりやすい
苦い例もある。
街歩きイベントで知り合った二人がいて、雰囲気は上々だった。
なのに女性のほうが、追われる女の記事を読み込みすぎた。
返信は三日後、誘いは二回断ってから、を律儀に守ったそう。
どうなったか。
男性は脈なしと受け取り、別の参加者と付き合い始めた。
彼女から届いたメッセージは、今も消せずにいる。
「駆け引きのつもりが、ただの音信不通でした(泣)」
好意が見えない相手を、人は追いかけない。
好きになってくれた人を好きになる、好意の返報性という心理が働くから。
返信の速さに正解はない。
仕事が立て込めば夜になるし、暇なら五分で返す。
理由が自分の都合なら、媚びでも駆け引きでもないよ。
相手の反応を操るために時計を見る、その癖を手放す。
追われる女は逃げる人じゃなく、好意を渡したうえで自分の足で立つ人だよね。
予定を明け渡さない人は、会える一日が濃くなる
追われている女性にもう一つ共通するのが、予定の扱い。
誘われたら全部空ける、をやらない。
陶芸教室があるからその日は無理、来週の木曜なら嬉しい。
断って終わりにせず、代わりの日を自分から出す。
駆け引きで予定を偽るのとは別物!
本当に自分の暮らしが詰まっているから、会える一日の密度が上がる。
男性からすると、予約の取れない店というより、常連になりたい店に近いかな。
サークルで出会って結婚した夫婦がいる。
奥さんは今も月に一度、一人で山に登りに行くんだとか。
旦那さんいわく、帰ってきた日の話がいちばん面白いんだって。
付き合ったあとも追われ続ける人は、自分の世界の鍵を渡していない。
媚びるのが苦手な人の落とし穴は、好意が届いていないこと
序盤の人気と、終盤に名前が挙がる人は入れ替わる
媚びるのが苦手で、あざとい子ばかり選ばれると感じている人へ。
悔しいよね。分かる。
受付から眺めていると、確かに序盤はリアクションの大きい子に人が集まる。
乾杯から三十分は、彼女たちの独壇場。
終盤になると空気が変わる。
帰り際、もう一度話したい人を男性に聞くと、挙がる名前が入れ替わってるの。
落ち着いて話を聞いてくれた人、自分の意見を返してくれた人。
あざとさは花火で、媚びない人の魅力は炭火に近い。
火がつくまで時間はかかるけれど、長く温かいよ。
媚びないと無愛想は、隣に座るとまるで違う
ただ、炭に火種がなければ始まらない。
媚びない女性がモテないわけじゃなく、好意の出し方を知らない人が本当に多い。
システムエンジニアの女性がいた。
腕を組み、返事は短く、目が合うとそらす。
本人に聞くと、媚びてると思われたくなくて、だって。
男性側の感想はこう。
「嫌われてるのかと思って、話しかけるのをやめました」
ああ、もったいない…!と心の中で叫んだわ。
媚びないことと、心の窓を閉め切ることは別の話。
彼女は媚びを捨てたつもりで、愛嬌まで同じゴミ袋に放り込んでた。
媚びずに好意を伝える、三つの小さな動き
彼女に提案したのは三つだけ。
一つ目は、お礼に相手の名前を添える。
ありがとうで終わらせず、田中さんありがとう、と呼ぶの。
名前が入ると、自分だけに向けられた言葉として届くから。
二つ目は、楽しかったら口に出す。
感想を言っているだけで、媚びとは無関係でしょ。
三つ目が、小さく頼ること。
それ取ってもらえますか、くらいで十分だよ。
人は助けた相手に好意を持ちやすい、という心理もあるし。
次のイベントで、彼女がやったのはこの三つのみ。
笑顔の練習も、声を高くする努力もなし。
帰り道、男性二人から食事に誘われてた。
(人ってこんなに変わるのか)と、私のほうが面食らったくらい。
慣れてきた彼女は、四つ目を自分で足してた。
行きたい店を、自分から提案すること。
誘うのは媚びじゃない。行きたい場所を口にしているだけ。
少し手の内を明かすと、相手も心を開く。
心理学でいう自己開示の返報性だね。
媚びは自分を偽る行為で、自己開示は自分を見せる行為。
向きが真逆。
媚びない恋愛は、自分を折りたたまないことから
嫌われる怖さは、消さなくていい
媚びてしまう人を、責める気にはなれない。
根っこにあるのは、嫌われたくないという怖さだから。
愛着の研究でも、見捨てられる不安が強い人ほど相手に合わせすぎると言われている。
性格の欠点じゃなく、身を守る癖に近い。
ある参加者は、合わせるのをやめたら誰も残らない気がすると打ち明けた。
半年後に聞くと、離れた人は確かにいたそう。
代わりに、残った人との会話が長く続くようになったと話してくれたよ。
怖さを消そうとしなくていい。
怖いまま、小さな本音を一つだけ外に出す。
それで離れていく人は、合わせ続けてもどこかで離れる人だし。
全部に笑っていた彼女の、その後
布巾を握っていた、あの彼女のこと。
あの夜、私が伝えたのは一つだけだった。
次は苦手なものを一回だけ、苦手と言ってみてと。
翌月のワイン会。
隣の男性が、激辛の火鍋の店を猛プッシュしてきたらしい。
彼女は初めて、笑ってごまかさなかった。
「私、辛いの苦手なんです。辛くない鍋なら行きたい」
男性の返事は、じゃあ白湯スープのうまい店を探します、だったとか。
後日、三回目のデートまで行けましたと報告が届いた。
文面から声が弾んでいるのが伝わって、私まで嬉しくなったなあ。

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