イベントの片付けをしていた夜のこと。
紙コップを重ねる私の横に、参加者の男性が静かに立ちました。メーカー勤務の31歳Kさん。
差し出されたスマホの中、元カノとのLINEには既読のつかない吹き出しが7つ。インスタを開けば、ユーザーが見つかりません、の表示。
「電話も着拒で。もう連絡手段がないんです」
笑おうとして失敗した顔、今でも思い出せるなあ。
(ああ、この画面、私も見たことがある)
社会人イベントサークルを運営していると、同じ相談を何度も受けます。まさか自分がブロックされる側になるなんて!全員がそう言う。
探しているのは、連絡を取る裏ワザじゃないんだよね。
まだ終わっていないと、誰かに言ってほしい。何もできない時間を、どうにかしたい。
Kさんも、そうだった。
元カノと連絡手段がない状況は、大きく2つに分かれる
彼女の側から断たれたケース
LINEはブロック、電話は着信拒否、SNSも非表示。Kさんはこちら。
全部が閉じている状態は、彼女からの最後のメッセージでもあります。中身はひとつ。今は連絡しないで。
しんどいけれど、ここを読み違えると先がこじれていくから。
自分で消した、いつの間にか途絶えたケース
別れた勢いで連絡先を消去。何年も経って、気づけばアカウントごと消えていた。
5年前の元カノに謝りたくなった、という40歳の男性もいました。知っているのは昔のメールアドレスのみ。送った文面は宛先不明で戻ってきたとのこと。
こちらは拒まれたわけではありません。同じ検索ワードでも、取っていい行動がまるで違ってくる。
イベントで耳にする相談は、体感では断たれた側の話が大半かな。
元カノが連絡手段をすべて断つ心理
嫌いだからとは限らない、揺れたくないという自衛
元彼をブロックした理由を、女性参加者から聞く機会が何度もあってさ。意外と多かった答えがこちら。
「嫌いになったわけじゃないんです。通知に名前が出るたび、決心が揺らぐのが怖くて」
28歳、看護師さんの言葉。嫌悪というより自衛でしょ。
窓を閉めたのは外が憎いからじゃない。風が入ると、片付けたばかりの部屋が散らかるから。
もちろん、怖かった、深く傷ついたという理由で閉じる人もいます。新しい恋人への配慮。友人に勧められて。別れた夜の勢い。
理由は人の数だけあって、外からは見分けがつきません。
別れ際の追いLINEが引き金になること
ブロックされた男性たちの話を並べると、共通点がひとつ浮かんでくる。別れを告げられたあとの数日間に、長文を何通も送っている。
謝罪、思い出、もう一度だけ会いたい。しかも主語がほぼ全部、俺。
俺は謝りたい、俺は変わる、俺はまだ好きだ。彼女が何に疲れたのかは、一行も出てこない。
受け取る側からすれば、別れるという決断を聞いてもらえなかった数日間だよね。ブロックは、声が届かなかった人が最後に閉める防音扉。
正直言って、私も20代の頃に同じことをやらかした側。マジで消したい記憶(泣)
(送信した直後のあの後悔、今でも布団をかぶりたくなる)
別れ方で変わる、閉じた窓の意味
喧嘩の勢いで閉じた窓は、熱が引くと開くことがあります。
時間をかけて冷めた末の別れは別。静かに閉じられたぶん、固い。
浮気や暴言、束縛がきっかけなら、閉じた理由は身を守るためです。開く前提で動かないこと。これだけは言い切れる。
ブロックが解除されるのはどんなときか
解除した経験のある女性たちの話には、似た流れがあったんだよなぁ。
時間が経って、思い出しても胸が波立たなくなった頃。二人を知る友人から、彼が落ち着いて暮らしていると聞いた頃。
追われている気配が消えて、はじめて窓を開ける気になるそう。別ルートで連絡が来た人は、口をそろえて解除する気が失せたと話していました。
痛みの話も少し。
失恋して間もない人に、元恋人の写真を見せた実験があります。体の痛みを感じるときと重なる脳の領域が反応したという報告。
ブロック画面で胸がズキッとするのは、気のせいじゃない。弱いから痛むわけでもないよ。
連絡手段がない状態からの復縁、可能性と行動の線引き
可能性が残る別れ、厳しい別れ
連絡手段がない状態から復縁した人は、私の知る範囲に確かにいます。多くはない。けれどゼロでもない。
戻った人たちの別れの原因は、忙しさやすれ違い。時間とともに変わりうるものばかりでした。
別れたあとに追いすがった期間が短い。共通の知り合いとのつながりが、自然に残っている。この2点も同じ。
彼の近況が、誰の作為もなく彼女の耳に入る環境ですね。
厳しかったのは、暴言や束縛を繰り返していた人。閉じられたあとに別ルートで連絡してしまった人。
彼女に新しいパートナーがいる場合は、静かに身を引く以外の道がありません。
ブロックされたなら、沈黙が唯一届く返事
戻った人たちに共通していたのは、何もしなかったこと。
Kさんはあの夜を境に、彼女へ向けた行動をすべてやめたんです。代わりに始めたのが、月2回のボルダリングと自炊。
8か月後、突然彼女のほうからLINEが届いたんだって。
「元気にしてる?友達から、なんか変わったって聞いて」
二人は一度食事をしたらしい。その先は聞いていません。聞かなくていいかな、と思える顔をしていたので。
待てば戻ってくる、という話とは違う。閉じられた相手に届く返事は、沈黙しかない。ただそれだけ。
誕生日や年始の挨拶くらいなら、と考える人もけっこういます。閉じられている間は、記念日も例外になりません。
冷却期間という言葉があるけれど、作戦として冷やすのとは別物。
途絶えただけなら、一度きりの確認にとどめる
自分で消してしまった人、機種変更で途絶えた人は事情が別。
共通の友人がいるなら、連絡してもいいか聞いてもらう。一度きりね。伝言や仲介まで頼むと友人が板挟みになるので、確認までにしておく。
公開されているSNSへの挨拶も、短く一通。返事が来なければ、それが返事です。
先ほどの40歳の男性は、同窓会の幹事に一度だけ確認を頼みました。返ってきたのは、彼女は結婚して元気にしているという近況。それで十分でした、と彼は笑っていた。
荷物やお金の清算が残っているときは、間に人を挟むと穏やかに済みます。
別アカウントや待ち伏せが招くもの
失敗パターンもはっきりしてる。
別アカウントを作って連絡した29歳の男性。翌日にはそちらも閉じられ、仲間内からも距離を置かれたと聞きました。
「あれで完全に終わりました」
打ち上げの隅で、そう話してくれたっけ。
受け取った側の声も聞いています。32歳の女性のもとに、知らないアカウントから元彼の文章が届いた夜。懐かしさより先に、背筋が冷えた。どこまで追ってくるんだろう、が最初の感想だったとか。
最寄り駅で偶然を装って待った人は、結局、警察から注意を受けています。
拒まれているのに、電話やメッセージ、手紙を繰り返し送る。これはストーカー規制法の対象です。位置情報を無断で取る行為も規制されています。
住所や勤務先を調べる、誰かに居場所を探させる。どれも彼女の恐怖を大きくしてしまう。
好きだからという理由は、法律の前でも彼女の前でも通らないんです。
連絡できないほど元カノが忘れられない理由
平気だったはずが、数か月後に崩れる人たち
別れた直後は、拍子抜けするほど元気。仕事も飲み会も普通にこなす。
ところが2、3か月経った頃、急に眠れなくなる。
失恋してイベントに来る男性には、この時間差パターンが目立ちます。解放感と忙しさで蓋をしていただけ、と本人たちは振り返っていました。
遅れて届いた請求書みたいなもの。今さら落ち込むなんて情けない、と責めなくていいからね。
終わっていない物語は頭に居座る
最終回を見逃したドラマほど、続きが気になるもの。
完了していない事柄ほど、記憶に残りやすい。心理学でツァイガルニク効果と呼ばれる現象です。
連絡手段がない別れは、まさに最終回のないドラマ。言えなかった謝罪、聞けなかった本音。それが頭の中をぐるぐる回り続ける。
忘れられないのは未練が人一倍強いからじゃなく、終わり方のせいでもあるわけ。
あの時ちゃんと話せていれば、と悔やむ夜が長いのも無理はないよなぁ。
連絡したい衝動の何割かは、禁止への反発
現場で見えてきたことがひとつ。ブロックされた直後の男性ほど、復縁への熱が高い。
あの熱の正体、愛情だけなんだろうか。
人は自由を取り上げられると、取り戻したくなる性質を持っています。心理的リアクタンスという名前までついている。
ダイエット中のケーキがやたら輝いて見える、あれと同じ理屈じゃん。
連絡したい気持ちの全部が愛情とは限りません。何割かは、押せなくなったボタンを押したいだけ。
電源の落ちた自動販売機の前で、何度もボタンを叩いている状態に近いかも。
衝動の強さを、愛の深さの証拠にしなくていい。
忘れられない夜に、気持ちを整理する方法
送らない手紙を書く
イベント常連の34歳の男性が教えてくれたやり方。
元カノ宛ての手紙をノートに書く。謝罪も恨み言も全部。絶対に送らない、が唯一のルール!
感情を文字にして外へ出す。この筆記が気持ちの整理を助けるという研究は、長く重ねられてきました。
彼は3日目の夜、書きながら気づいたと言います。
「謝りたかったんじゃなくて、許されて楽になりたかっただけでした」
はぁ…耳が痛い。
別れの原因を、彼女の言葉で書き出す
ノートをもう1ページ使う。
別れ際に彼女が口にした不満を、できるだけ彼女の言葉のまま書く。自分の解釈を混ぜないのがコツで、これがなかなか難しい。
忙しいって言われた、では足りません。約束を3回続けて飛ばされて悲しかった、まで戻る。
主語を俺から彼女へ移す練習になる。次に誰と付き合うにしても、この1ページはお守り代わり。
SNSを見に行かない仕組みをつくる
深夜2時、友人のストーリーに彼女が映っていないか探す。相談に来る男性のほぼ全員がやっています(笑)
たまに情報が手に入るからこそ、やめられなくなる。当たりが不規則に出るスロット、あれと同じ原理。
意志の力で我慢するのは分が悪い。ストーリーをミュートして、アプリはホーム画面の奥へ。
(ミュートを押す指が一瞬ためらうのも、知ってる)
寝室にスマホを持ち込まないだけで、夜中の確認はかなり減るよ。
深酒もすすめません。酔った指は、しらふの決意より速いので。
待つなら期限を、手放すなら静かに
期限のない待機は執着に変わる
待つと決めたなら、期限を自分で決めておく。半年でも1年でもいい。その日が来たら、もう一度考え直す。
期限のない待機は、彼女のための時間じゃなくなっていく。決められない自分を守る時間に、すり替わってしまうんです。
何もせず1年待って、何も起きなかった人もいます。36歳の男性は、自分の誕生日を期限にしていました。その翌週の料理イベント、隣の席の人と笑っていた姿を覚えています。待った時間が無駄だったとは、本人は言っていません。
待つあいだ、相手をブロックし返さない。病んだ投稿をしない。
充実ぶりを見せつける投稿も逆に働くみたい。別れた直後から華やかな写真が急に増えて、当てつけに見えて冷めた。そう話す女性が複数いました。
できるのはそこまで。
欲しいのは彼女か、愛されていた自分か
元カノ以上の人はいないと話す男性に、どこが好きだったのか尋ねることがあります。
返ってくるのは、彼女の特徴より自分の状態だったりする。安心できた。認められていた。帰る場所があった。
それは、彼女にしか作れないものではないかもしれません。

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