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ありがとうをよく言う女性の恋愛心理と脈ありの見分け方

受付でボールペンを渡しただけなのに、ありがとうございますが三回飛んできた夜がある。ドリンクを手渡したとき。席へ案内したとき。名札を書き終えて顔を上げたとき。二十代後半、初参加、肩にちょっと力の入った人だった。

うわ、この子めちゃくちゃ緊張してるな

社会人向けのイベントを主催していると、開始十分でその人が今どんな気分で来ているのかは伝わってくる。声の大きさじゃない。笑顔の量でもないの。ありがとうの出方で見えてしまうものが、意外とあるんだよね。

感謝の言葉って、その人が場をどう感じているかの温度計みたいなもの。多い人が優しくて、少ない人が冷たい。そんな単純な話ではないところが、面白い。

同じありがとうでも、口から出る速度が違う。相手の目を見る長さも違う。前後にくっついてくる言葉が違う。そこに、その人の緊張や好意や癖が全部乗ってしまう。

会場で何年も見てきた光景をもとに、感謝が多い人の内側で起きていることを分けていく。読み終わるころには、あの人のありがとうがどちら側のものなのか、測る目盛りが手元に残るはず。

目次

ありがとうが多い女性、現場で見えた6タイプ

呼吸みたいに出ているタイプ

接客、看護、保育、営業。声を使う仕事をしてきた人のありがとうは、もう口の筋肉が覚えてる。反射に近い速さで出る。軽く聞こえるけれど、嘘ではないよ。

ここを好意と読むと、けっこう痛い目にあう。アパレル出身の女性が来た回、彼女は全員に同じ明るさで感謝を配っていた。ある男性がそれを自分だけへの合図として受け取ってしまい、解散前にかなり踏み込んだメッセージを送ってしまった。翌日、彼女から困り果てた声で相談の連絡が入った。はぁ…あの回は主催として反省したなあ。

脈を測る材料としては、いちばん役に立たない。ここを外すところから始めたい。

見分け方は簡単で、店員さんへの態度を見ればいい。ドリンクを運んできたスタッフにも同じ速さでありがとうが出るなら、それは職業の癖。あなたにだけ発動するスイッチではないの。

好意がこぼれてしまうタイプ

このタイプ、感謝の中身がやたら細かい。

さっき飲み物こぼしたとき、すぐ紙ナプキン出してくれましたよね。三十分前の出来事を、順番ごと覚えている。その人の注意が、ずっとそちらへ向いていた証拠でしょ。

心理学でいう返報性、受け取ったら返したくなる働きが動いている。好意そのものは重すぎて返せない。感謝なら角が立たない。だから最初に出てくるのが、ありがとう。

去年の花見の会で、参加者の女性がひとりの男性にだけ三回お礼を言っていた。荷物を持ってもらったこと。写真を撮ってもらったこと。帰り道が同じ方向だと気づいてくれたこと。三つとも内容が違う。全部その人の行動を見ていた。二ヶ月後、ふたりは付き合った。

丁寧語で壁を作っているタイプ

毎回フルサイズの、ありがとうございます。崩れない。にこやかなのに二次会には来ない。

丁寧さは、優しさの顔をした距離でもある。世の中の記事では感謝の多さが好意のサインとして紹介されがちだけど、現場の実感はむしろ逆。距離が縮んだ人ほど、ありがとうは短くなっていく。ありがと、に変わる。うれし、とだけ言う日も出てくる。語尾が崩れた瞬間のほうが、よっぽど雄弁なんだよね。

丁寧なまま半年経つなら、その丁寧さは選ばれている。

申し訳なさが漏れているタイプ

すみません、ありがとうございます。この二語が必ずくっついてくる人。

会計の場面でわかりやすい。おごられたあと、ずっと落ち着かない。財布を出したまま固まる。何か返さなきゃという顔で、ひとりだけ場から浮いてしまう。頼ることに罪悪感があるから、感謝が謝罪の色を帯びる。

この人たちの感謝はいちばん量が多くて、いちばん読み違えられやすい。

以前、バーベキューの回で受付を手伝ってくれた女性がそうだった。トングを渡しただけで、すみません本当にありがとうございます、と深く頭を下げる。買い出しを代わってもらったときは、後日お菓子を持ってきた。うれしいんだけど、こちらが何もしていない気分になってくる。彼女は後になって、人に迷惑をかけるのがずっと怖かったと話してくれた。感謝の多さの下に、別の感情が沈んでいるパターン。

好意と読み違えられて、断るのに疲れてしまう人も少なくない。優しさが誤解を呼ぶって、なかなか理不尽だよね。

場を回してしまう幹事気質

自分の楽しさより、周囲の居心地。取り皿を配りながらありがとうと言う。空いたグラスに先に気づく。誰に対しても均等に感謝が飛んでいく。

恋愛感情とは別の回路で動いているタイプ。好きな人ができたときだけ、そのバランスが崩れる。全方向に配っていた気配りが、一点だけ雑になったりする。そこが見どころ。

気になる相手の前でだけ取り皿を配り忘れる幹事を、何人か見てきた。本人はまったく気づいていない。周りは全員気づいている(笑)。

沈黙が怖いタイプ

会話の隙間を埋める音として置いている。相槌の代わりのありがとう。話題が切れるたびに出てくるなら、たぶんこれ。

好意ではなく、不安。初参加の人にいちばん多い。

見分けるなら、二回目以降の変化を見るといいよ。場に慣れると、このタイプの感謝はすっと減っていく。減ったのは冷めたからじゃなくて、安心したから。三回目くらいから急にふざけ出したりして、(あ、こっちが素だったのか)と気づく瞬間がある。あれ、主催としてはちょっと嬉しい。

男性側は、あれをどう受け取っているのか

イベント後に集めた感想を読み返すと、好印象は圧倒的多数。ただし条件がつく。

誰にでも言ってる感じがすると、逆に冷める。この声、想像よりずっと多い。ありがとうの価値は回数ではなく、どれだけその人だけに向いているかで決まっているらしい。

三十代の男性参加者がぽろっと言った言葉が忘れられない。気を遣われてる感じがして、途中からこっちが緊張しましたって。感謝が多すぎると、相手は採点されている気分になることがある。じわっと居心地が悪くなるやつ。

好かれたくて増やしたありがとうが、相手を身構えさせてしまう。切ないよね。

逆に評判がよかったのは、量ではなく解像度の高い人。あの店を教えてくれて助かりました、と行為の名前まで言える人。覚えていてくれた、という感覚が残るらしいよ。

四十代の常連の男性は、こんな言い方をしていた。お礼を言われるより、覚えられてるほうが効くんだよなあ、って。言われてみればそう。ありがとうは礼儀として流せるけれど、覚えていた事実は流せない。

もうひとつ、男性側から出てきた話で興味深かったのが、返事に困るという声。ありがとうを重ねられると、いえいえ、大丈夫ですよ、を繰り返すしかなくなる。会話が続かない。感謝が多いほど親密になれるわけではなくて、むしろ言葉のラリーが止まってしまうことがある。

好意か礼儀か、測る三つの目盛り

ひとつめ、落差。全員に同じ量なのか、その人にだけ増えるのか。絶対量ではなく増減を見る。四人グループの会話で、誰へのお礼が一回多いか。それだけで見えてくる。

ふたつめ、具体性。何に対してのありがとうなのか。行為の中身を覚えているなら、注意がそこに向いていた時間が長い。

みっつめ、視線の順番。言い終わってから目が合うのか、目が合ってから言葉が出るのか。後者は感情が先に動いている。これ、慣れるとけっこうわかる。

三つのうち二つ揃えば、そこそこ当たる。ひとつだけなら保留にしておくくらいが、お互いに安全。

補助的に見ているのが、連絡が来る時間帯のありがとう。当日その場で言われたものは礼儀の色が濃い。帰宅後、しかも寝る前に届くありがとうには、思い出した時間が挟まっている。誰かのことを一日の終わりに思い出すって、そこそこの出来事でしょ。

ただ、社交辞令として翌朝きっちり送る習慣の人もいる。だからここは決め手にしない。目盛りは重ねて使うもの。

ありがとうを言いすぎてしまう側の人へ

ここからは逆側の話。感謝とごめんねが止まらなくて、自分でも疲れている人向け。

感謝を伝える習慣そのものは、心理学の研究でも良い方向に働くと報告されてきた。感謝を書き留める習慣と主観的な幸福感の関係を調べた研究、感謝には人間関係を結び直す働きがあるという指摘。ここは疑わなくていい。

ややこしくなるのは、感謝が謝罪とくっついているとき。

借りを作らないよう、その場で返そうとする。相手からすると、いつまでも清算されている感じ。対等さがじわじわ薄れていく。ある女性参加者は、好きな人からの誘いに毎回わざわざ返礼を用意して、相手が引いてしまった経験を話してくれた。あれはつらかったです、って笑いながら(泣)。

置き換えの練習をひとつ。遅れて到着したとき、すみませんの代わりに、待っていてくれてありがとうと言ってみる。同じ状況なのに、相手が受け取るものが変わる。謝罪は相手を裁判官の席に座らせる。感謝は隣に座らせる。

すぐには変わらないよ。三ヶ月くらいかけて、口が慣れていく感じ。

もうひとつやってみてほしいのが、返さないで受け取る練習。おごってもらった日に、その場で何かを返そうとしない。次に会うときまで持ち越す。借りが残ったまま夜を越えると、最初はそわそわして落ち着かないと思う。それでいい。返さない状態に耐えられると、関係が続く前提で人と付き合えるようになる。

感謝が多いこと自体を直す必要はないからね。減らすんじゃなくて、混ざっているものを分ける。謝罪は謝罪の場面に置いて、感謝は感謝の場面に置く。それだけで、相手の受け取り方はずいぶん変わる。

どうしても苦しさが続くようなら、恋愛の話として抱え込まずに、カウンセリングのような場で聞いてもらう選択肢もある。ひとりで矯正しようとして疲れる人、けっこう見てきたから。

伝わるありがとうへの言い換え

ありがとうございますだけだと、内容が空っぽになりやすい。行為を足すと一気に変わる。

席を替わってくれて助かりました。話を聞いてくれてほっとした。あの店を教えてくれてうれしかったです。

感情をひとつ乗せるのがコツ。うれしい、助かった、ほっとした、笑った。この四つを回せば、だいたい足りる。

時間差で伝えるのも効くよ。その場で言うありがとうに、後日もう一回だけ足す。この前おすすめしてもらった映画、観たらめちゃくちゃ刺さりました、みたいな。相手の言葉が自分の生活のどこに着地したかを見せる。これをやられると、たいていの人は嬉しい。

連発しそうになったときは、ありがとうを名前に替えてしまう手もある。ありがとうございます、を三回言う代わりに、二回目は相手の名前を呼ぶ。呼ばれた側の反応、けっこう変わるから見ていて面白い。

回数を減らして、密度を上げる。ふわっと消える感謝より、相手の記憶に残る感謝のほうが、ずっと遠くまで届くからね。

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