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わがままな彼女と優しい彼氏が疲れる前に知る甘え方と限界サイン

日曜の夕方、イベントの片付け中だった。紙コップを袋にまとめていたタクさんが、声を落として言う。彼女、めちゃくちゃ可愛いんですけどね…疲れちゃって。

その直後にスマホが鳴った。彼女からの着信。タクさんは一瞬で声を明るくして、うん、今終わったとこ、すぐ行くよ、と返す。電話を切ったあとの横顔を見ていたら、胸がズーンと重くなったんだよね。

サークルは社会人向けのイベントで飲み会、ハイキングなの楽しい出会いの場のはずなのに、二次会はなぜかその話もよく出る(笑)。中でも、わがままな彼女と優しい彼氏という組み合わせは、体感でダントツ。

悩みは、たぶん三つに分かれる。彼氏側は、もう疲れた、別れるべきなのか、これって普通なのか。彼女側は、私わがまますぎ?彼が我慢してる気がして怖い。三つ目は、彼氏に可愛くわがままを言いたい、甘えとの境目が知りたい、という人。

現場で何十組も見てきて、彼の優しさは、飲み込んだ不満の別名。彼女のわがままは、言葉にできない不安の代わりに出てくる。だから最後に起きるのは大喧嘩じゃなくて、静かな別れ。

■優しい彼氏ほど、自分の限界に気づけない

タクさんは三十歳のエンジニアで、付き合って一年半。彼女のユイさんは、デートの行き先を全部決めたがるとか。返信が三十分遅れると不機嫌になるし、週末は当然という顔で彼の予定を埋めてくるタイプだそう。

それでも彼は怒らない。怒らないというより、怒れないのかも。子どもの頃から優しいねと言われて育って、それがそのまま自分の値札になった人。優しくない自分を出したら何が残るのか分からないんだって。

いや、それ優しさじゃなくて、ケンカが怖いだけじゃない?

二次会で口に出そうになって、飲み込んだ。だってタクさん自身が誰より分かってる顔をしてたから。

心理学者ジョン・ゴットマンの研究に、関係を壊す四つの反応というものがある。その一つが、石のように黙り込むこと。相手の話を聞いているようで、心のシャッターは下りている。優しい彼氏の我慢は、外から見るとこれに近い。本人は耐えているつもりでも、彼女からすると壁に話しかけているのと同じ。

我慢って、冷蔵庫の奥に置いた調味料に似てる。一本ずつなら気にならない。捨てる機会を逃し続けて、ある朝、扉が閉まらなくなる。タクさんの冷蔵庫は、もう扉が浮きかけていた。

■わがままな彼女は、何を確かめているのか

彼女側の話に移るね。別の日、女性だけの読書会イベントで知り合ったミホさんが、帰り際に言った。彼氏が優しすぎて、怖いんです。

え、怖い?と聞き返すと、彼女は少し笑って続けた。わがまま言っても受け止めてくれちゃうから、どこまでいけるのか分からなくて。試しちゃうんです。もっと言ったら、さすがに怒るかなって。

聞きながら耳が痛かった。二十代の頃の私、完全にこれだったから(泣)。

愛着理論の研究では、不安の強い人ほど相手の愛情を確かめる行動が増えるとされている。子どもの心理でよく使われる試し行動という言葉があって、大人の恋愛にもそのまま当てはまるわけ。嫌われないか確かめるために、わざと嫌われそうなことをする。石橋を叩いているつもりで、橋の上で飛び跳ねているようなもの。

わがままの中身も一種類じゃない。素直に甘えたいだけの日もあれば、不安で確かめたい日もある。付き合いが長くなって、要求が癖になっただけの日。たまに、相手を道具扱いしてしまう日だってある。同じわがままに見えて、彼女の中で起きていることは日によってまったく違う。

ゴットマンには別の研究もあって、パートナーの小さな働きかけへの応え方が、満足度を左右するという結果が出ている。わがままの何割かは、実はつながりを求めるノック。叶えるかどうかより先に、ノックに気づいて振り向けるかで結果が違ってくる。

ミホさんが一番欲しかったのは、何でも聞いてくれる彼じゃなかった。今日は無理、と言ってくれる彼。断られて初めて、この人にも自分の意思があるんだ、と安心できるから。優しさだけを受け取り続けると、鏡に向かって話している気分になって、だんだん心細くなる。意外と、こういう女性は多いわ。

■優しい人が突然去る仕組みと、その前に出るサイン

秋のハイキングイベントに、タクさんが一人で来た。ユイさんは?と聞くと、まぁ、ちょっと…、と濁す。この、ちょっと、が出た時点で(あ、来たな)と察しがつく。

聞けば、最近のタクさんはデートの提案を一切しなくなったらしい。彼女が決めることに、いいよ、大丈夫、としか返さないんだって。怒りもしないし、笑いもしない。返信は早いのに、文章が短くて丁寧なの。まるで取引先へのメール!

これが限界サインの典型。結局、優しい人は爆発しない。代わりに、少しずつ人格の出力を落としていくだけ。提案が減って、不機嫌にすらならなくなって、自分から予定を入れなくなる。冗談が消えて、記念日を淡々とこなすようになったら、かなり後ろの方まで来てるサイン。グラスの中の氷のように音もなく溶けて、気づいた時には水になってるんだよね。

彼女側からすると、これがマジで分かりにくい。表面上は今までどおり優しいから。むしろ前より穏やかになった、なんて勘違いすることさえある。ユイさんもそうだったみたい。

ここで私がやらかした話をひとつ。数年前、似た状況の男性会員に、もう別れちゃえば?と軽く言ってしまった。彼はその週に本当に別れてさ。しばらくして、彼女の方が別のイベントに来て、何が悪かったのか分からないまま泣いていた。あの時の自分、ダサすぎる。他人の関係に、外野が答えを出しちゃいけなかった。

■甘えとわがままの境目は、相手に選ぶ余地があるかどうか

ここから、彼女側が今日から変えられる話。

同じサークルにリナさんというメンバーがいて、彼氏のコウさんも一緒に来ることが多い。ぶっちゃけリナさん、わがままじゃん(笑)。帰りたいと言ったら帰るし、あのカフェ行きたいと突然言い出す。なのにコウさんは、わがまま言われるの嫌じゃないっす、と平然としてる。

観察して分かったのは、リナさんのわがままには必ず逃げ道があること。今日眠くて早く帰りたいな、無理なら全然いいけど。この最後の一言で、コウさんに選ぶ権利が残るのよ。甘えなら、投げたボールを取るかどうかは相手が決められる。わがままだと、相手のグローブにボールをねじ込むかたちになっちゃう。投げるものは同じでも、渡し方で別物になるでしょ。

それと、リナさんは回収を忘れない。わがままを聞いてもらった帰り道、ありがと、今日わがまま言っちゃったね、と毎回口にする。コウさんの表情が、その瞬間に緩むんだよなぁ。感謝で締めれば、要求は借金じゃなくて贈り物の交換になるの。

男性会員の本音を集めると、面白いことに、わがまま自体を嫌がる人は少ない。何を考えてるか分かるから楽っす、という声のほうが多いくらい。優しい彼氏が疲れるのは、察するのが苦手だからじゃなくて、察し続けているから。言葉にしてもらえた方が、頭を休められるってこと。

彼氏に可愛くわがままを言いたい人は、内容を工夫するより先に、この二つを試してみてほしい。逃げ道を残す。それから、あとで拾いにいくこと。手をつなぎたい、遠回りして帰りたい、今日は電話で寝落ちしたい、寒いから上着貸して。この手の願いは、大抵の彼氏が喜んで叶える。逆に、友達との約束を削らせる、直前キャンセルを当たり前にする、謝らない、お礼を言わない。この辺は、どんなに可愛く言ってもこっそり減点されてるわ。

■優しい彼氏が、優しさを捨てずに本音を出す方法

タクさんの話には続きがある。ハイキングの帰りのバスで、隣に座った彼に、思い切って聞いてみた。ユイさんに、しんどいって言ったことある?返ってきたのは、ないです、傷つけたくないんで、という答え。

そこでIメッセージの話をした。心理学者トマス・ゴードンが広めた伝え方で、主語を相手じゃなく自分にするやつ。君はわがまますぎる、じゃなくて、俺、その言い方されると結構しんどい。責めていないから、相手も防御しなくて済む。それだけの違いなのに、会話の温度がこんなに変わるんだ、って驚かれた。

もう一つ。溜めてから言わない。冷蔵庫がいっぱいになってから捨てるんじゃなく、その日の分はその日に。週に一回、五分でいい。今日なんか嫌だったことある?とお互いに聞く時間を決めておく。タクさんは半信半疑でスマホにメモしてた(笑)。

一か月後、タクさんからLINE。言いました!の一言のあとに、泣かれたけど、その後ちゃんと話せた、と続いていた。ユイさんは、優しいから何言っても平気だと思ってた、と言ったそう。まさか、そんなに我慢させてたなんて、と。その時になって初めて、二人は相手の中身を覗いた。

■わがままを直そうと頑張るほど、こじれる理由

彼女側に戻るね。ミホさんは、わがままを直したいと本気で言っていた。でも、直すぞと構えるほど上手くいかない。

わがままを言って、彼が笑顔で受けて、あとで自己嫌悪に沈む。反動で、もっと確かめたくなるのよね。この回転は、意志の力じゃ止まらない。止めるのは、彼がいなくても自分はまあまあ大丈夫だ、という土台のほう。

実際、頑張って我慢しすぎた時期のミホさんに、彼が、最近なんか遠いね、と言ったらしい。優しい彼氏だって、頼られなくなれば寂しい。ゼロを目指すと、別のものが壊れる。

ミホさんがやったのは、わがままを我慢することじゃなかった。わがままを言ったあとに、自分の本音を一言添えること。さっきの、ほんとは不安で言っちゃった。これだけで彼氏の受け取り方がひっくり返る。要求に見えていたものが、助けを求めるサインになるから。彼氏の側も、ただ叶える以外の返し方を思いつける。

あと、彼女自身の時間を増やしたのも大きかったみたい。友達との予定、ひとりで行くイベント、彼に報告しないささやかな楽しみ。返信が遅いだけで心臓がドキッとする夜も、だいぶ減ったって言ってたね。

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