ボードゲーム会の途中だった。28歳で経理職のMさんが、隣に座った30歳のKくんに向かってひと言。
「その服、寝間着?」
場が一瞬しんとして、Kくんは苦笑い。私はテーブルの反対側で、ため息をついていました。せっかく仲良くなりかけてたのになぁ。
ところが二次会の帰り道。Mさんが私の袖をつかんで、小声で言ったんです。Kくんのこと、実はけっこう好きなんですよね、と。 (えっ、あれで?) 顔に出たらしく、Mさんは泣きそうな顔のまま笑いました。素直にするの、無理なんです。好きだって気づかれるくらいなら、嫌われた方がマシって思っちゃう。
社会人サークルを運営して数年、この手の話は珍しくありません。好きな相手にだけ冷たい、からかう、わざと素っ気なくする。自分でも自覚していてやめられないやつ。世間では好き避けと呼ばれますよね。小学生男子の定番のように語られがちだけど、大人の女性にも普通に起きます。むしろ職場や社会人イベントのような、周りの目がある場所ほど出やすい。Mさんも職場では、気になる同僚にだけ返事が短くなるタイプだったそうで、周りに気づかれたくない気持ちが態度をさらに硬くしていた。
好きな人に意地悪する女性の心理、現場で聞いた本音
Mさんに理由を聞いたら、答えは意外とシンプルでした。好意がバレるのが、死ぬほど恥ずかしい。
心理学には反動形成という言葉があって、本当の気持ちと真逆の態度を取ることを指します。好きだと知られたくないから、正反対の行動で隠す。当人としては防御のつもりなのに、相手からは攻撃にしか見えないという、なんとも不器用なやり方。
ただ、恥ずかしさだけじゃないんですよね。Mさんの話をほどいていくと、もう一段下に別の怖さがありました。先に好きになったら負け、という感覚。優しくして、期待して、それで振られたら立ち直れない。だったら最初から冷たくしておけば傷は浅くて済むでしょ?という先回りの保険です。
(それ、掛け金が高すぎない?)
心の中でツッコみつつ、責める気にはなれなかった。過去に手痛い失恋を経験した人ほど、この保険に入りがちなんですよ。愛着理論でいう回避型、親密さそのものを警戒するタイプの動きに近い。幼い頃に甘えを受け止めてもらえなかった経験と結びつけて語られることも多いんです。
もう一つ、イベントでよく見るのが試し行動。意地悪しても離れていかないなら本物、という確認作業です。本人は無自覚なことがほとんどで、Mさんも指摘されて初めて目を丸くしていました。
それと、今の関係を壊したくない気持ち。いじって、いじられて、笑い合える距離は居心地がいい。素直になった瞬間にその空気が変わる怖さは、Mさんも口にしていました。素直な自分なんて可愛くない、と心底信じていたのもあるんだよ。
嫉妬も混ざります。Kくんが別の女性参加者と楽しそうに話していた日、Mさんのいじりは明らかにキツくなった。本人は否定してた。あれ、絶対そうなんだけどさ。
この数年で見てきた限り、意地悪する女性はだいたい四つに分かれます。照れ隠し型、防衛型、試し行動型、嫉妬型。Mさんは防衛型が七割で、残りが照れ隠し。自分がどれに近いか見えるだけで、直す糸口はかなり変わります。
意地悪してくる女性は脈あり?見るべきは意地悪の後
Kくんはあの日、家に帰ってから何を思ったか。後で聞いたら、俺、嫌われてるんだなと落ち込んで、次の回を欠席しようか割と真面目に迷ったそうです(泣)
ここが好き避けの一番痛いところ。うちのサークルで似た相談を持ちかけてきた男性、ほぼ全員が同じ反応でした。とにかく、嫌われた方に受け取る。まさか好意の裏返しだなんて、受け取った側は考えもしない。意地悪をした側の女性が思っている何倍も、届いていないんです。
じゃあ、脈ありかどうかを何で見分けるか。意地悪そのものより、その直後の行動を見てください。
Mさんの場合、寝間着発言のあとが違いました。Kくんの飲み物が空いたのを見て、さりげなくメニューを渡す。帰り際には、今日ごめんね、とだけ。翌日のLINEは絵文字つきの丁寧な文面で、対面の刺々しさとの落差がすごすぎ!このギャップ、現場で最も頼れるサインなんだよね。
四回目のイベントで、たまたま二人が同じ組になった時のこと。周りが席を外した数分間、Mさんは急に敬語になって、Kくんのグラスの位置を直していたと後からKくん本人が教えてくれました。二人きりだと別人。これも典型です。
サインはまだあります。意地悪の矛先が自分にだけ向いているかどうか。二人きりになると口数が減るとか、逆に甘くなるパターン。あなたが他の女性と話すと機嫌が目に見えて下がる。こないだ話した細かい趣味の話を、なぜか覚えていたり。あとは、いじる内容。服や口癖といったどうでもいい部分ばかりで、仕事の能力や容姿には触れてこないこと。
LINEでいうと、対面で毒舌な人ほど文面が丁寧になる傾向を、うちでは何度も見ています。返信が早いし、質問で終わるし、スタンプが妙に可愛い。対面との温度差が大きいほど、意識されている確率は上がります。職場なら、仕事の相談だけ頻繁に持ってくる、退勤のタイミングがなぜか重なる、あたりも似た系統。
逆のケースも書いておきますね。Yさんという参加者は、誰に対しても同じ調子で毒を吐く人でした。Tくんはそれを自分だけへの特別扱いだと受け取ってしまった。三回目のイベントで食事に誘って、遠回しに断られています。
あの時、止めればよかったかなぁ
誰にでも同じなら、それは性格。意地悪のあとに何のフォローもない。一対一の場面を避ける。LINEは既読のまま放置で、しかも言ってくる内容が容姿や能力の否定。ここまで揃ったら、好き避けとは別物と割り切った方が消耗しません。
あなたの好意に気づいているけれど応えられなくて、気まずさから距離を取る。いわゆるごめん避けというやつも。こっちは意地悪というより、目を合わせない、会話を短く切り上げる、という静かな避け方になりやすい。
勘違いして痛い男になりたくない気持ち、分かります。正直言って、サインは一つ二つ見つけただけでは信用できません。
意地悪してくる女性を振り向かせたKくんの対応
Kくんが何をしたか。まず、あの場で怒らなかった。それだけで半分クリアです。寝間着じゃないよ、勝負服なんだけど?と笑って返して、ゲームに戻った。ムキになって言い返すのでも、うつむいて黙るのでもない。軽口で受けて、流す。
二次会の片付けで二人きりになったタイミングで、低い声で言ったんだとか。さっきの、地味に刺さったよ。責める口調じゃなくて、少し笑いながら。
Mさんはそこで完全にフリーズ。 やっちゃったって顔で、ごめん、癖なの、と消え入りそうな声で謝ったと聞いています。
ここで関係が動きました。意地悪をされた側が、傷ついたことを重くせず、でもちゃんと言葉にする。すると意地悪した側は、自分の防御がただの攻撃として届いていた事実を突きつけられる。同時に、なお離れない相手の余裕も見える。試し行動に対する答えを、Kくんは怒りではなく正直さで返したわけです。
心理学に自己開示の返報性という考え方があります。片方が本音を見せると、相手も本音を返しやすくなる、というもの。Kくんのあの言葉は、Mさんが素直になるための最初の扉でした。そこから二か月ほどで、二人は付き合い始めています。
Kくんが他にやっていたのは、Mさんが素直になった瞬間を見逃さないこと。今日楽しかった、と控えめに言われたとき、大げさに喜ばず、俺も、で返す。受け取ったことだけは伝える。大げさに反応すると、Mさんのような人は自分の素直さを恥じて、次から引っ込めます。この距離感、なかなか難しいんですよ。
Mさんの前で他の女性参加者の話をしない、というのも徹底していたみたい。二人きりの時間は、イベントなら片付けや帰り道で自然に作れます。わざわざデートに誘うより、五分の立ち話を何回か積む方が、警戒心の強い人には向いている。追いかけすぎず、自分の予定を優先する日も持つ。追われすぎると、Mさんタイプは逃げますからね。
やってはいけないのは、本気で怒ること。露骨にしょげるのも同じくらいまずくて、相手は罪悪感で余計に離れていきます。意地悪をやり返すのは、試し行動の泥沼に自分から足を突っ込むようなもの。過剰にへりくだるのもダメ。この人には気持ちをぶつけなくていいや、と思われて終わりです。
付き合った後の意地悪と、見切りのライン
付き合って五か月、Kくんに近況を聞きました。Mさんは家では驚くほど甘えん坊になったらしい。外での意地悪だけは、ゼロにはならない。会う前のLINEで突然冷たい一文が来て、会うといつも通り嬉しそう。Kくんいわく、今はあれが合図に見えるとのこと。
もちろん喧嘩はします。Mさんが軽いノリで言ったことに、Kくんが流せずズキッときた日があった。その時にKくんがやったことも初回と変わらず、翌日、それは無理、と短く伝える。Mさんは謝って、以後その話題には触れていないそうです。付き合い始めに、これだけは言われたくないという線を二人で決めておいたのも大きい。意地悪する女性と付き合うなら、この地味なやり取りを飽きずに続ける覚悟が要る。
見切りの話も避けて通れません。Rくんという参加者は、ある女性のいじりを好き避けだと信じて八か月追いかけていました。意地悪のあとの気遣いは一切なし。サシの誘いは全部はぐらかされ、LINEは自分から送った分しか動かない。周りが見ても脈はなかった。でもRくんは、意地悪されるのは興味がある証拠、の一点で粘っていたんです。
それ、しんどくない?と聞いたら、しんどいっす、マジで、と。結局その日で追うのをやめて、翌年には別の参加者と付き合っています。
意地悪しっぱなしで、その後に何も来ない。それが三か月続いたら、好き避けじゃない可能性を真剣に考えていい頃合いです。すり減るだけの関係を、意地悪の解釈ひとつで延命するのはもったいないじゃん。
好きな人に意地悪してしまう女性が素直になるまで
最後に、Mさん側の話。自分の意地悪がKくんをあそこまで落ち込ませていたと知ったあと、彼女は腹をくくって直そうとしました。
最初にやったのはLINEです。対面だと口が勝手に悪口を言う。文字なら送る前に数秒考えられる。今日はありがとう、の一文を、送信ボタンの前で三回見直して送ったんだって。ソワソワしすぎて、既読がつくまでスマホを裏返して置いてたとか(笑)
次が、意地悪した直後のフォロー。ごめん、照れた。これだけ。取り消すんじゃなくて、意地悪の理由を添える。Kくんはこれで、刺されても意味が分かるようになった、と言っていました。
三つ目は、褒めるでも好意を伝えるでもなく、頼ること。ちょっとこれ持ってて、とか、この店知らない?とか。甘えを受け止めてもらう練習は、こういう小さな依頼から始めた方が続きます。いきなり好きだと言えないのは当たり前で、順番がある。感謝、褒める、頼る、好意を小出しにする。Mさんは半年かけてこの階段を上りました。
いじり合いの空気が消えるのを怖がっていたMさんですが、蓋を開けたら残っていました。冗談の回数が減って、笑いの質が変わった、それくらい。
怖いのは、男性がはっきり嫌いだと言ってくれないこと。嫌われたと解釈したKくんは、その日誰にも言わず、次の回を休むつもりでいました。意地悪された側は静かに去る。だから直すなら早い方がいいんだよね。

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